米国の6月生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回り、7月の追加利上げ観測が後退しました。BTCは一時6万5,000ドル台、ETHは1,900ドル台まで上昇しましたが、その後はともに上昇幅を縮めています。

今回の反発には、金利上昇への警戒が和らいだことと、米国の現物ETFへの資金流入が影響しています。

一方、Open Interestの減少、ロング清算、マイナス圏のCoinbase Premium、減少が続くステーブルコイン供給を見ると、市場全体へ現物資金が広く戻った状態ではありません。

また、約5万ETHの取引所流出やETH/BTCの上昇も確認されました。現在の資金移動はアルトコイン全体へ一斉に広がっているというより、まずETHへ集中していると考えられます。

この記事では、PPI低下を受けた反発の持続性、現物買いとレバレッジの関係、ETHへの資金集中、BTCが次に確認すべき価格帯を整理します。

7月16日の暗号資産市場・主要指標

※価格は7月16日23時台JST。ETFフローは最新確定値である7月15日分です。

指標現在の状況見方
BTC価格約64,600ドル台65,400ドル台から反落
ETH価格約1,880ドル台1,900ドル回復後に押し戻される
ETH/BTC約0.0290.03突破前で足踏み
Fear & Greed Index25/Extreme Fear価格反発ほど心理は改善していない
BTC Funding Rate約+0.003〜+0.010%ロング優位だが過熱は限定的
BTC Open Interest約211億ドル、24時間約−2%価格下落とともに建玉が減少
BTC清算額約2,950万ドル約8割がロング清算
BTC現物ETF+1億770万ドル2日連続の純流入
ETH現物ETF+5,390万ドルETHへの資金流入も継続
ステーブルコイン供給約3,095億ドル7日−0.25%、30日−1.70%
Coinbase Premium−0.0967米国現物市場の買いは弱い

Fear & Greed Indexは25の「Extreme Fear」で、前日から変化していません。BTCが一時6万5,000ドル台へ上昇しても、市場心理はまだ大きく改善していないことが分かります。

Funding、Open Interest、清算データはCoinalyze、センチメントはAlternative.meで確認できます。

PPI鈍化は追い風だが、原油が次のリスクになる

7月利上げの可能性は後退

6月の米PPIは前月比0.3%低下し、前年比では5.5%となりました。市場予想の6.2%を下回り、コアPPIも予想より弱い結果でした。

これを受け、7月FOMCで政策金利が据え置かれる確率は87.7%へ上昇し、利上げ確率は12.3%まで低下しました。

BTCとETHが発表後に上昇したのは、金利がさらに引き上げられる可能性が後退したためです。

関連:米PPI低下で7月利上げ観測が後退

ガソリン安が物価を押し下げた

CPIに続いてPPIも弱かったため、インフレ鈍化が定着し始めたように見えます。

ただし、今回のPPI低下を大きく支えたのは、6月のガソリン価格が12%下落したことでした。物価全体が幅広く落ち着いたというより、エネルギー価格の低下に助けられた面があります。

原油再上昇で状況が変わる可能性

PPI集計後には、ホルムズ海峡を巡る緊張からブレント原油が1週間で18%上昇しています。

原油高が続けば、ガソリン価格や輸送費を通じて物価へ再び上昇圧力がかかります。

今回のPPIは、インフレ問題が解決したことを示す数字ではなく、7月に利上げを急ぐ必要性が一度弱まったことを示す数字と考える方が自然です。

関連:ガソリン安による物価低下と原油再上昇

ETHへの資金集中がさらに明確に

先物Open Interestは198億ドルへ増加

ETHは長く続いていた下降トレンドラインを上抜け、記事時点の先物Open Interestは198億ドルまで増加しました。これは6月3日以来の高水準です。

一方、上昇局面の清算はショート側へ大きく偏っていました。値動きの一部には、売りポジションの買い戻しによるショートスクイーズも含まれています。

1,900〜2,000ドル付近では出来高が十分に増えておらず、上抜けが定着したかはまだ確認が必要です。

関連:ETHの下降トレンド突破とOI増加

約5万ETHが取引所から流出

現物側では、複数の新規ウォレットが48時間以内に約5万ETHを取引所から引き出しました。BitMineも6,000 ETHを追加取得しています。

先物建玉だけでなく、現物の取引所流出も同時に起きたことは、ETHへの資金集中を考えるうえで重要です。

ETH/BTCも1週間で6.14%上昇しました。BTC以外へ向かった資金の最初の受け皿がETHになっていると考えられます。

関連:大口ウォレットによるETH取得

アルト市場全体への波及はまだ限定的

ETHが強くなると、アルトコイン市場全体の上昇を期待したくなります。しかし、アルトコインシーズン指数は低下しています。

現在確認できるのは、アルトコイン全体への一斉な資金移動ではありません。まずETHへ資金が集中し、その先へはまだ十分に広がっていない状態です。

ETHが2,000ドルを出来高とともに突破し、ETH/BTCが0.03を明確に超えれば、資金の広がりを一段強く確認できます。

ETF流入と市場全体の現物需要には温度差がある

BTC・ETH ETFは2日連続の純流入

最新確定の7月15日分では、米国の現物BTC ETFへ1億770万ドル、現物ETH ETFへ5,390万ドルが純流入しました。

BTC・ETHともに2日連続のプラスであり、ETFへの資金流入は今回の反発を支える現物材料です。

ETFフローはFarside Investorsで確認できます。

一方、BlackRock全体の運用資産は15兆3,400億ドルと過去最高を更新しましたが、デジタル資産の運用残高は3カ月で約20%減少しています。

日次のETFフローは改善していますが、巨大な機関資金全体が暗号資産へ戻った状態ではありません。

関連:BlackRockの運用資産と暗号資産残高

Coinbase Premiumはマイナス圏

BTCのCoinbase Premiumは−0.0967です。

ETFには資金が入っているものの、米国の現物市場全体でBTCを積極的に買い上げる動きはまだ弱いことを示しています。

ステーブルコイン供給も減少

ステーブルコイン総供給は約3,095億ドルですが、7日間で0.25%、30日間では1.70%減少しています。

ETFという限定された経路では資金が入っている一方、市場全体の待機資金はまだ増えていません。

ステーブルコイン供給はDefiLlama、Coinbase PremiumはCryptoQuantで確認できます。

ロング整理後のBTCは現物買いの広がりを待つ

OI減少とロング清算

BTCのOpen Interestは約211億ドルで、24時間では約2%減少しました。

24時間の清算額は約2,950万ドルで、約2,330万ドルがロング、約620万ドルがショートです。

価格下落と同時にOIも減っているため、新規ショートが大量に増えたというより、PPI後の上昇で積み上がったロングの一部が整理された動きに近いと考えられます。

Funding Rateはプラスを維持していますが、極端な過熱を示す水準ではありません。

ETFが下値を支え、レバレッジが値幅を広げる

今回のBTC反発は、レバレッジだけで作られたものではありません。現物ETFには実際に資金が入っています。

ただし、Coinbase Premiumはマイナスで、ステーブルコイン供給も減少しています。

現在はETF流入が下値を支え、短期のレバレッジが値幅を広げている状態です。次の上昇には、ETF以外の現物買いが増えることが必要です。

DeFiでは事業継続リスクも表面化

Ostiumでは約1,800万ドル、Summer.fiでは約610万ドルの被害が発生し、Summer.fiは事業終了を決めました。

BTC価格への直接的な影響は限定的ですが、DeFi銘柄ではTVLや収益に加え、鍵管理、資金分散、事故後の補償余力も確認する必要があります。

関連:Ostiumの資金流出Summer.fiの事業終了

昨日までとの差分

昨日までは、ETF流入、大口によるBTC買い、Open Interestの増加が同時に起き、BTC反発の中身が改善していました。

今日はPPI低下というマクロ面の追い風が加わりましたが、BTCは6万5,000ドル台を維持できず、OIも減少しました。好材料が増えた割に上値を定着できなかった点は、現物需要の広がりがまだ限定的であることを示しています。

一方、ETHでは約5万ETHの取引所流出、BitMineの追加取得、ETH/BTCの上昇、先物OIの増加が確認されました。

昨日までの「BTC以外にも資金が向かい始めた可能性」から、今日は「その資金がまずETHへ集中している」という見方へ解像度が上がりました。

BTC価格予想

メインシナリオ:63,800〜66,900ドル

63,800ドル付近を維持できれば、65,500〜66,900ドルの上値を再び試す展開が想定されます。

ETF流入は下値を支える一方、Coinbase Premiumとステーブルコイン供給が弱いため、66,900ドルを超えるまではレンジ内の反発として見ます。

強気シナリオ:68,500〜70,000ドル

65,500ドルを回復し、66,900ドルを終値ベースで突破することが条件です。

ETF流入の継続に加え、Coinbase Premiumの改善や現物出来高の増加が確認できれば、68,500ドル、次に70,000ドルが目標になります。

1か月以内に70,000ドルを定着できれば、72,000〜75,000ドルも視野に入ります。

弱気シナリオ:61,700〜62,000ドル

63,800ドルを割り、63,000ドルを回復できない場合は、61,700〜62,000ドルまで下値余地が広がります。

さらに61,700ドルを明確に割れると、60,000ドル、次に58,000〜58,500ドルが意識されます。

原油高によるインフレ懸念の再燃やETFフローのマイナス転換が、このシナリオを強めます。

Take-home message

PPI鈍化とETF流入はBTCを支えていますが、Coinbase Premiumとステーブルコイン供給を見る限り、現物買いはまだ市場全体へ広がっていません。

ETHでは先物建玉の増加に加え、大口による取引所からの引き出しも確認され、BTC以外の資金はまずETHへ集中しています。

BTCは63,800ドルを維持できるか、上方向では66,900ドルを現物買いとともに突破できるかが、次の1週間から1か月の方向を決めるポイントになります。

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