冒頭の概要

7月21日の暗号資産市場は、ビットコイン(BTC)が6万6000ドル台へ上昇し、イーサリアム(ETH)も反発しました。CLARITY法案を巡る進展期待、米国現物ETFへの資金流入、取引所からのBTC流出が重なり、現物面では改善が確認されています。

一方で、BTCのOpen Interest(未決済建玉)は価格以上の速さで増えています。Funding Rateはまだ低く、すぐに過熱と判断する段階ではありませんが、上昇が現物買いだけで作られているわけでもありません。

ステーブルコイン供給の縮小や、前日までマイナスだったCoinbase Premiumも考えると、今回の反発は「回復の入口」ではあっても、全面的な上昇転換が確認された状態ではありません。

この記事では、価格、ETF、Funding、Open Interest、清算、ステーブルコインを一緒に並べ、反発を支えている資金と、今後崩れやすい部分を整理します。最後に、BTCについて強気・メイン・弱気の3つのシナリオを示します。

主要指標

数値は原則として7月21日23時10分ごろ(日本時間)の観測値です。ETFは米国市場の直近確定日である7月20日分を使用しています。

指標数値見方
BTC価格66,910ドル、24時間で+3.95%6万5000ドルを回復し、6万6900ドル付近の供給集中帯を試しています
ETH価格1,938.74ドル、24時間で+4.16%BTCと同時に上昇し、市場全体へ反発が広がっています
Fear & Greed Index25、Extreme Fear(前日29)価格上昇に対して心理の回復が遅れています
BTC現物ETF+2億2,680万ドル前営業日の+1億3,230万ドルから流入が約71%増えました
ETH現物ETF+3,800万ドル小幅ながら流入が継続しています
BTC Funding Rate+0.0007%ロング優勢ですが、全体的な過熱水準ではありません
BTC Open Interest520.3億ドル、24時間で+9.18%価格上昇率を上回り、レバレッジが急速に戻っています
ETH Open Interest279.6億ドル、24時間で+6.62%ETHでも新しいポジションが増えています
24時間清算全体2億6,210万ドル値動きの拡大により、ポジション整理も増えました
取引所BTC残高248万BTC、24時間で約5,400BTC減少取引所にある潜在的な売却可能量は減少しました
ステーブルコイン供給約3,000億ドル市場全体の待機資金はまだ拡大していません
Spot CVD短期は改善、30日軸はマイナス足元の買いは戻りましたが、中期の現物需要は回復途上です

Fear & GreedはAlternative.me、ETFフローはFarside InvestorsのBTCおよびETH、デリバティブと取引所残高はCoinGlassを参照しています。

1.反発を支えたのは規制期待とETFの現物資金

CLARITY法案への期待で市場全体に資金が戻る

最初に価格だけを見ると、BTCが悪材料をこなして6万6000ドル台へ戻した、という反発相場に見えます。今日の記事を並べると、その背景には二つの現物寄りの材料があります。

一つ目は、米国のCLARITY法案を巡る進展期待です。暗号資産の市場構造を整備する法案について、審議を止めていた倫理条項で合意が近いと報じられました。

これを受け、暗号資産の時価総額は24時間で約630億ドル増え、2兆3,200億ドルに達しました。

CLARITY法案の記事では、約39万7,000BTC、全供給量の1.98%が6万6,898ドル付近で取得されていることも示されています。

この価格帯は、現在の保有者が損益分岐を迎えやすい水準です。そのため上値では売買が増えやすいものの、ここを越えた先では取得価格が集中するBTCが少なくなります。

ETF流入は増えたが、過去の流出を埋める規模ではない

二つ目はETFです。7月20日の米国現物BTC ETFは2億2,680万ドルの純流入となり、前営業日から流入額が増えました。

ETF資金は現物市場へ接続するため、先物だけが上昇している局面よりも価格の下支えになりやすい材料です。

ただし、回復の規模は、それ以前の流出局面と比べる必要があります。

ETF流入再開の記事によると、直近2週間の回復額2億7,300万ドルは、それ以前の8週間に流出した82億ドルの3.3%です。

資金の向きは流出から流入へ変わり始めましたが、失われた需要を取り戻した段階ではありません。今後は1日だけの流入額より、数営業日続けて買いが入るかが重要になります。

2.価格以上に建玉が増加――反発は現物だけではない

Open Interestは価格上昇率を上回る

BTCは24時間で3.95%上昇しましたが、Open Interestは9.18%増えました。ETHも価格が4.16%上昇する間に、Open Interestは6.62%増えています。

新しい資金が入っている点は前向きですが、価格上昇以上の速さでデリバティブのポジションが積み上がっていることも分かります。

現物買いによって価格が上がり、その後から先物の参加者が追いかけているのであれば、上昇を補強する動きになります。

一方、先物のポジション増加だけが続き、現物買いが弱くなる場合は、反発の土台が不安定になります。

Fundingは低く、全面的な過熱には至っていない

ここでFunding Rateが役立ちます。

BTCの集計Fundingは+0.0007%、ETHは+0.0050%で、ロング側に傾いてはいるものの、極端な偏りではありません。

したがって、現状は「レバレッジが過熱し、天井が近い」と判断する段階ではありません。市場心理に悲観が残る中で、先物参加者が急速に戻っている状態と考えるのが自然です。

Fundingが低いままETF流入やSpot CVDの改善が続けば、現物需要を伴う上昇へ変わる可能性があります。

反対に、価格が止まっているのにOpen Interestだけが増え、Fundingも上昇する場合は、ロングポジションの偏りが強まっている可能性があります。

6万5000ドル割れでは建玉の巻き戻しに注意

Open Interestが増えた後に価格が止まると、反対方向への値動きに弱くなります。

24時間の清算額は市場全体で2億6,210万ドルに増えました。BTCが6万5000ドルを再び割る場合、増加した建玉の解消が下落を速める可能性があります。

ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、過度な暗号資産レバレッジの清算は終盤に入ったとの見方を示しました。

ただし、同氏はBTCの具体的な目標価格を示していません。フィンク氏の記事は、現在の価格帯が以前より安定している可能性を支える材料であり、上昇トレンドの確定を意味するものではないと読むのが適切です。

3.取引所からBTCは減少、しかし待機資金はまだ細い

取引所BTC残高の減少は現物需給を支える

CoinGlassでは、取引所のBTC残高が248万BTCとなり、24時間で約5,400BTC減少しました。

取引所からの流出は、すぐに売る目的ではないウォレットへ移された可能性を示します。ETF流入と同時に起きているため、現物面では需給改善の組み合わせです。

残高はBitcoin Exchange Balanceで確認できます。

取引所残高の減少だけで価格上昇が決まるわけではありませんが、売却可能なBTCが減る中で買い需要が増えれば、価格は上へ動きやすくなります。

今回はETFへの資金流入が同時に確認されているため、取引所残高の減少を単独で見るよりも意味があります。

ステーブルコイン供給は市場全体の回復を示していない

その一方、ステーブルコイン市場は約3,000億ドルまで縮小しています。

DefiLlamaのステーブルコイン統計で確認できる市場全体の供給量は、春の水準から減少しています。

ステーブルコインは、暗号資産を購入するための待機資金として使われます。供給量や取引所準備金が増える局面では、BTCだけでなくETHやアルトコインへ資金が広がりやすくなります。

現在はBTCを買う特定の資金が戻っていても、暗号資産市場全体へ新しい流動性が流れ込んでいるとは言いにくい状況です。

Spot CVDも短期では改善していますが、30日軸ではまだマイナスです。

最初はETF流入を伴う強い反発に見えます。しかし数字を並べると、現物需要の一部が回復し、そこへデリバティブのポジション増加が重なった反発と読めます。

価格上昇と市場心理の間に残るずれ

Fear & Greed Indexが前日の29から25へ下がった点も特徴的です。価格は上昇しているのに、市場心理はExtreme Fearへ悪化しました。

通常、価格が上昇すると市場心理も改善しやすくなります。今回は地政学リスクや金利への警戒が残り、価格上昇を見ても投資家がすぐに強気へ戻っていません。

悲観が残っているため、現在の段階で上値を追う参加者はまだ多くありません。

一方、ETF流入が続き、BTCが6万6,898ドル付近を明確に越えれば、慎重だった参加者が買いへ戻る余地もあります。

4.昨日までとの差分――焦点は次の供給帯へ

昨日までは米国需要と待機資金の弱さが中心だった

ここでは7月20日までの記事を、今日の主材料ではなく比較対象として整理します。

昨日までは、BinanceとBybitのステーブルコイン準備金が30日間で23億ドル減少し、Coinbase Premiumが-0.062とマイナス圏にあることが中心的な弱気材料でした。

さらに、高値圏で購入した大口保有者の実現損失は、月間平均9,000万ドルに達していました。

オンチェーンの弱気指標は、6万4000〜6万5000ドル付近の反発を支える米国現物需要が十分ではない可能性を示していました。

今日の焦点は6万6,898ドルの定着へ移った

今日変わったのは、BTCが6万5000ドルを回復しただけでなく、ETF流入が前営業日から増え、取引所のBTC残高も減ったことです。

価格を見るうえでの焦点は、6万5000ドル付近で下落が止まるかという段階から、約39万7,000BTCの取得価格が集中する6万6,898ドル付近を定着して越えられるかへ移りました。

ただし、Coinbase Premiumやステーブルコイン準備金の弱さが解消されたと確認できたわけではありません。今日の現物改善が数日続くかを見て、初めて継続的な需要と判断できます。

また、前日記事で示されたFRBの利上げリスクは、中期的な継続テーマです。

予想通りの政策変更よりも、市場予想を上回る利上げ幅やペースが価格に強く効く点は変わりません。

BTC価格予想――7月末までの3シナリオ

予想は条件と価格帯を組み合わせて考える

価格予想は一点の目標を置くより、条件が満たされたときに次の価格帯へ移る形で考えます。

価格は7月22日2時24分時点の約6万6,416ドルを起点とします。

シナリオ条件想定レンジ・目標
メイン(55%)ETF流入が続く一方、6万6,900ドル付近で売買が交錯6万4,000〜7万700ドル
強気(25%)6万6,898ドルを終値で越え、ETF流入とSpot CVDの改善が継続まず7万685ドル。突破後は中期的に8万3,000〜8万5,600ドル
弱気(20%)6万5,000ドル割れ、ETFの流出転換、Open Interestの急減6万3,800ドル、さらに6万ドル付近の再確認

上は6万6,898ドル、下は6万5000ドルが分岐点

メインシナリオでは、現物の改善とレバレッジ増加が拮抗し、6万4000〜7万700ドルのレンジを想定します。

6万6,898ドルより上は、保有者の取得価格分布が薄くなっています。買いが続けば、7万685ドルまで進みやすい構造です。

さらに上の大きな供給壁は8万3,000〜8万5,600ドルですが、これは7万ドル台を明確に定着した後の中期シナリオです。

弱気側では6万5000ドルが分岐点です。

この水準を失い、ETFも流出へ転じる場合、増えた建玉が巻き戻されやすくなります。最初の確認水準は6万3,800ドルで、そこでも買いが戻らなければ6万ドル付近の再確認が考えられます。

反対に、Fundingが低いまま現物買いが続けば、レバレッジだけに依存しない上昇へ変わる可能性があります。

Take-home message

今日の反発には、ETF流入、規制期待、取引所BTC残高の減少という現物面の支えがあります。

一方でOpen Interestは価格以上に増え、ステーブルコインと中期の現物需要には弱さが残るため、回復の継続確認が必要です。

BTCは6万6,898ドルの定着で7万685ドルが視野に入り、6万5000ドル割れでは建玉解消による6万3,800〜6万ドル方向を警戒する局面です。

この記事が参考になった方は、Xでも最新の市場メモを更新しています。
暗号資産・AI・米国株を、資金フローと需給の視点から読みたい方はぜひフォローしてください。