BTCは6.4万ドル台で越週、ETH優位は続くか|ETF・原油・CLARITY法案から読む7月第4週
7月第4週の暗号資産市場は、BTCが大きく崩れなかった一方で、全面的なリスクオンにも移行できない一週間でした。
BTCは週間で約0.24%、ETHは約1.13%上昇しました。しかし、BTC現物ETFは週初の3日間で4億9,910万ドルの純流入を記録した後、週後半の2日間で4億6,520万ドルが流出しています。週を通した純流入は3,390万ドルにとどまり、ETFによる買い支えは週末に向けて明確に弱まりました。
その一方、ETH現物ETFには週間で1億380万ドルが流入しました。ステーブルコイン供給はほぼ横ばいで、Fear & Greed Indexも「Fear」の範囲にあります。数字を並べると、今週は市場全体へ新しい資金が一斉に入ったのではなく、BTC、ETH、ステーブルコイン、RWAなどの間で資金の選別が進んだ週だったと考えられます。
この記事では、ETFとデリバティブ市場から反発の質を確認したうえで、原油・米国と日本の金融政策、ステーブルコインとRWA、CLARITY法案、相次ぐ事業撤退がBTC価格へどう影響するのかを整理します。
主要指標
※価格・デリバティブ指標は7月26日23時44分ごろのスナップショットです。ETFは直近取引日である7月24日までを使用しています。
BTCは横ばいでも、ETFの中身は週後半に変わった
| 指標 | 週末時点の数値 | 今週の見方 |
|---|---|---|
| BTC価格 | 64,620ドル、週間+0.24% | 6.5万ドルを明確に回復できず、レンジ内で越週 |
| ETH価格 | 1,894ドル、週間+1.13% | BTCを相対的に上回ったものの、1,960ドル付近が抵抗帯 |
| Fear & Greed Index | 26「Fear」 | 前週の28から低下。価格ほど心理は回復していない |
| BTC現物ETF | 週間+3,390万ドル | 週初3日間+4億9,910万ドル、後半2日間-4億6,520万ドル |
| ETH現物ETF | 週間+1億380万ドル | BTCを上回る純流入。今週の相対的な強さを裏付け |
| BTC Funding | 主要市場で+0.0012〜+0.0059% | 小幅プラス。ロング優勢ですが、広範な過熱は見られず |
| ETH Funding | 主要市場で+0.0024〜+0.0100% | BTCより強いロング傾向。ただし極端な水準ではない |
| Open Interest | BTC 484.3億ドル、ETH 268.6億ドル | 同日内ではBTC約1%、ETH約0.6%減少。上昇をレバレッジが追いかけた形ではない |
| 24時間清算 | BTC 673万ドル、ETH 1,175万ドル | 大規模清算が価格を一方向へ押した状態ではない |
| ステーブルコイン供給 | 3,104億ドル、週間+0.08% | 待機資金は維持されていますが、新規流動性の急増は確認できず |
| Coinbase Premium・Spot CVD | 週末値を再確認できず | 古い数値を流用せず、今回の判定からは除外 |
週初の買い支えは週末まで続かなかった
今週のBTCは、価格だけを見ると約6万4,000ドルから6万5,000ドルの範囲を維持しました。最初は、ETF流入の再開によって現物主導の回復が始まったように見えます。
実際、月曜日から水曜日までのBTC現物ETFには、合計4億9,910万ドルが流入しました。ところが木曜日に2億2,510万ドル、金曜日に2億4,010万ドルが流出し、週次ではわずか3,390万ドルの純流入まで縮小しています。
したがって、今週のBTCは「ETF資金が継続的に押し上げた」というより、週初の買いを週後半の売りがほぼ相殺しながらも、価格は6万4,000ドル台を維持したと読む方が自然です。
ETF流出に対して価格が急落しなかった点は底堅さを示します。一方、ETFが再び流入へ戻らなければ、6万6,000〜6万7,500ドルを上抜くための現物需要は不足しやすくなります。
レバレッジ主導の反発ではない
BTCのFundingは主要市場で小幅なプラスにとどまり、Open Interestも週末の日中比較では約1%減少しました。
価格が上昇しながらOpen Interestが減少する場面では、新規ロングの大量流入より、ポジション整理やショートカバーが含まれている可能性があります。少なくとも、レバレッジだけで価格が押し上げられた過熱相場とは言いにくい状況です。
これは急激なロング清算リスクを抑える点ではプラスです。ただし、ETF、Coinbase Premium、Spot CVDなどで現物買いが改めて確認できなければ、上昇の持続力も限定されます。
原油リスクは後退したが、金融政策へ形を変えて残った
米国とイランの攻撃停止は正式な停戦ではない
週後半には米国とイランの相互攻撃が一時停止し、Brent原油は木曜日の100ドル超から金曜日には97ドル付近へ下落しました。BTCも週末に6万4,000ドル台を維持し、直近の地政学リスクは一度和らいでいます。
ただし、米国とイランの動きは正式な停戦合意ではなく、米国による封鎖も残っています。さらにKplerは、ホルムズ海峡の恒久的な再開時期を2027年へ後ろ倒しし、日量約1,500万バレルの輸出停止が続いていると分析しました。
一見すると、原油が100ドルを割ったことでリスクは通過したように見えます。しかし、供給問題そのものが解決したわけではありません。Brent原油が再び100ドルを超えれば、インフレ懸念と利上げ警戒が同時に強まり、BTCを含むリスク資産の上値を抑える可能性があります。
次の焦点はFRBと日銀
来週はFRBと日銀の金融政策決定が近い日程で予定されています。いずれも政策金利の据え置きが中心シナリオですが、今回は金利そのものより声明と会見の内容が重要です。
原油上昇を受け、予測市場におけるFRBの利上げ確率は一時約38%まで上昇し、週末時点でも約34%でした。FRBがインフレに強い警戒を示せば、米金利とドルの上昇を通じてBTCの戻りを抑える可能性があります。
日銀については、ドル円が163円を超えるなかで、為替介入や追加引き締めを意識させる発言が出るかが焦点です。円高が急速に進んだ場合、円を調達してリスク資産を買うキャリートレードの巻き戻しが、暗号資産にも波及する可能性があります。
資金はETH、決済インフラ、RWAを選別した
ETHは価格とETFフローの両方でBTCを上回った
ETHは週間で約1.13%上昇し、BTCの約0.24%を上回りました。ETH現物ETFにも週間で1億380万ドルが流入し、BTCの約3倍の純流入を記録しています。
ETH市場のセンチメントは依然として弱く、ポジティブ・ネガティブコメント比率は1.089まで低下しました。過去1カ月では、同様に悲観が強まった2回の局面でETHがその後反発しています。
ただし、悲観が強いことだけで上昇が保証されるわけではありません。現在価格は実現価格とされる2,304ドルを約17%下回っており、1,930〜2,020ドルには戻り売りが出やすい領域があります。
今週のETHは、単なるアルトコイン期待ではなく、ETF流入、BTCを上回る週間騰落率、取引所残高の減少という複数の材料が重なりました。次は1,960ドルを上抜けた後もETF流入が続くかを確認したいところです。
ステーブルコイン競争は発行から流通網へ進んだ
今週はCircleによるデジタルキャッシュ構想やArc、OpenUSD、Telegram Wallet、KuCoin Pay、RippleのRLUSDなど、ステーブルコインと決済に関する記事が相次ぎました。
これまではUSDTとUSDCの発行残高が中心でしたが、今回は誰がブロックチェーン、ウォレット、本人確認、コンプライアンス、加盟店接続まで含む流通経路を押さえるかへ競争が広がっています。
一方、ステーブルコイン供給全体は週間で0.08%の増加にとどまりました。インフラ面の前進は確認できますが、短期的に暗号資産を押し上げる新規資金が急増したわけではありません。
RWAは成長と投機性を同時に確認する段階
トークン化資産市場は、2025年6月から2026年6月までに267%拡大しました。ただし、この成長は既存トークンの値上がりより、新しい資産の発行による部分が大きいとされています。
トークン化された金の保有量は約52万4,000オンスから100万オンス超へ増え、トークン化株式とETFもセクター全体の23%を占めるまでに成長しました。
Robinhood ChainでもRWA残高は2,540万ドル、トークン化株式は2,190万ドルまで拡大しています。ただし、取引量の大部分にはミーム株式ペアが含まれており、実需だけでなく投機需要も共存しています。
RWAの成長は実際の資産がオンチェーンへ移動する長期的な材料です。ただし、短期の取引量をそのまま機関投資家需要とみなさず、発行残高、保有者数、償還実績、継続的な手数料収入を分けて確認する必要があります。
規制の具体化と事業撤退が業界の選別を進めた
CLARITY法案は期待から条文と票読みの段階へ
今週、米上院共和党は616ページのCLARITY法案修正版を公開しました。SECとCFTCの管轄整理、取引所破綻時の顧客資産保護、開発者保護などが盛り込まれています。
これは暗号資産規制が単なる政策期待から、具体的な条文を評価する段階へ進んだことを意味します。
しかし、上院通過には60票が必要で、共和党53議席だけでは成立しません。公職者の暗号資産事業を巡る倫理規定も対立点となり、記事時点の年内成立確率は予測市場で約37%まで低下しました。
規制の枠組みが明確になれば、取引所、カストディ、ステーブルコイン、トークン化証券には中長期的なメリットがあります。一方、成立時期が後ろ倒しになれば、短期的な規制期待だけで上昇していた銘柄には失望売りが出やすくなります。
撤退、破産、ハッキングも相次いだ
週内にはBitMEXの事業終了、BitMartの縮小、DangoのDEX・L1停止、Movement LabsとPoolinの法的整理に加え、複数のブリッジや決済サービスで流出事故が報じられました。
DangoはDEX取引を7月29日、L1を8月13日に停止する予定で、2026年に入ってからの主要な暗号資産事業の閉鎖・破綻事例は17件に達したとされています。
すべてを同じ原因でまとめることはできませんが、資金調達環境、規制対応、開発の遅れ、セキュリティ、利用者獲得が同時に問われています。
市場全体には短期的な不安材料です。一方で、資本、利用者、収益、法規制への対応力を持つ事業者へシェアが集まりやすくなるため、業界内の差は今後さらに広がる可能性があります。
週初から何が変わったのか
| 週初に見えていたもの | 週末までに確認できた変化 |
|---|---|
| BTC現物ETFの流入再開 | 木・金曜日に計4億6,520万ドルが流出し、週間純流入は3,390万ドルまで縮小 |
| BTCを中心とした市場回復 | ETHが騰落率とETFフローでBTCを上回り、資金の選別が明確化 |
| 原油高と戦争激化への警戒 | 相互攻撃は停止したものの、正式停戦ではなく、焦点はFRBと日銀へ移行 |
| CLARITY法案への成立期待 | 616ページの条文が公開され、倫理規定と上院の票数が現実的な障害として浮上 |
| ステーブルコイン・RWAの成長期待 | 決済網と発行は前進した一方、ステーブルコイン供給は横ばいで、RWAには投機取引も混在 |
| インフラ拡大のニュース | 撤退、破産、上場廃止、ハッキングが続き、成長と淘汰が同時進行 |
最も大きな差分は、週初にはBTCのETF流入が市場回復の中心に見えたのに対し、週末にはその流入が失速してもBTCが6万4,000ドル台を保ったことです。
これは売りを吸収した底堅さと読めますが、上昇トレンドの再開を示すには不十分です。ETF流入の再開、ステーブルコイン供給の拡大、Coinbase PremiumとSpot CVDの改善がそろって初めて、現物主導の反発として信頼度が高まります。
BTC価格予想:来週の3つのシナリオ
| シナリオ | 条件 | 想定レンジ |
|---|---|---|
| 強気 | 66,600〜67,500ドルを日足で上抜け、ETFが純流入へ回復。原油が100ドル以下で安定し、Fundingが過熱しない | 68,000〜70,000ドル。70,000ドル定着なら72,000〜75,000ドル |
| メイン | ETFフローが強弱混在、ステーブルコイン供給は横ばい。FRB・日銀が大きなサプライズを出さない | 62,400〜67,500ドル |
| 弱気 | 63,200ドルを割り、ETF流出が継続。原油100ドル超、FRBのタカ派化、急な円高によるポジション解消が重なる | 62,400ドル、次に61,100ドル。ここも割れると58,000〜60,000ドル |
BTCは5日移動平均線の約65,350ドルを下回る一方、20日移動平均線の約63,315ドルを上回っています。短期的には上昇と下落のどちらにも傾き切っていない位置です。
上方向では65,400ドル、66,600ドル、67,500ドルが段階的な抵抗帯になります。67,500ドルを超えてもETFが流出したままであれば、上抜けが続かない可能性があります。
下方向では63,200ドル、62,400ドル、61,100ドルが確認ポイントです。特に61,100ドルを終値で割る場合は、単なるレンジ内調整ではなく、5万8,000〜6万ドルへ価格帯を切り下げるシナリオを考える必要があります。
来週はBTC価格だけでなく、ETFフロー、原油、米金利、ドル円、Funding、Open Interestが同じ方向を示すかが重要です。価格が上昇し、ETF流入と現物需要も改善するなら反発の質は高まります。価格だけが上昇し、ETF流出やOpen Interestの急増を伴う場合は、上値追いを慎重に評価したいところです。
Take-home message
① BTCは週間でほぼ横ばいでしたが、週初のETF買いが週後半に失速し、市場全体が一方向へ回復したとは言いにくい内容でした。
② ETH、ステーブルコイン決済、RWA、規制整備には前進が見られる一方、供給される新規資金は限られ、撤退・破産・ハッキングによる業界内の選別も進んでいます。
③ 来週はBTCが6万7,500ドルを突破できるかだけでなく、ETF流入、原油100ドル、FRBと日銀、6万3,200ドルの支持線を組み合わせて確認することが重要です。
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