BTCは65,000ドル台を回復し、ETHは2,000ドル目前まで上昇しました。地政学リスクの緩和で原油が大きく下がり、インフレ再加速への警戒がやや後退したことは、暗号資産にとって追い風になりそうです。

ただ、資金データまで広げると、今回の反発には少し違う表情も見えてきます。Funding Rateは穏やかな一方、Open Interestは増加し、ETHではショート清算が膨らみました。現物CVDとCoinbase Premiumは弱く、直近のETFフローも流出です。価格を押し上げた力は、幅広い現物買いというより、先物の買い戻しとレバレッジの積み上がりに寄っていた可能性があります。

この記事では、7月27日のニュースと数値だけを材料に、原油安とFOMC、CLARITY法案、Strategyの資金事情、そして反発を支えた資金の中身を整理します。最後に、昨日までに見えていた景色との違いを切り分け、BTCの価格シナリオへつなげます。

主要指標

指標7月27日時点読み方
BTC価格約65,200ドル50日移動平均線を上回り、66,900ドルが次の壁
ETH価格約1,958ドル24時間ではBTCより強く、2,000ドル目前
Fear & Greed Index30(Fear)前日の26から改善。ただし心理はまだ慎重
BTC Funding Rate+0.0047%/8時間ロング優勢ですが、過熱感は限定的
ETH Funding Rate+0.0073%/8時間BTCより高く、短期資金が集まりやすい状態
Open InterestBTC 484.2億ドル/ETH 284.4億ドル価格上昇とともに建玉も増加
24時間清算BTC 5,287万ドル/ETH 1億3,412万ドルETHのショート清算が反発を増幅
現物CVD(Bybit)BTC 約-200 BTC/ETH 約-2,371 ETH現物の成行買いはまだ優勢とは言いにくい
現物ETFフローBTC -2.401億ドル/ETH -7,070万ドル7月24日は両方とも純流出
Coinbase Premium-0.0884%米国時間の現物需要は弱め
ステーブルコイン供給約3,098.8億ドル30日で-0.81%。待機資金の拡大は未確認

数値は取得時点や集計先によって差が出るため、方向性を比べるための目安として扱っています。Fear & Greed IndexCoinGlassFarside InvestorsDefiLlamaを参照しています。

原油安が追い風、FOMCが次の関門

7%安が和らげたもの

イランが攻撃停止を示唆したことで、原油価格は約7%下落しました。エネルギー価格の上昇は、物価を通じて利下げを難しくする要因です。その反対に原油が落ち着けば、インフレへの不安が和らぎ、株式や暗号資産の評価を支えやすくなります。

今回のニュースは停戦合意ではなく、攻撃を受けないことを前提とした条件付きの停止です。そのため、原油安をそのまま地政学リスクの解消と受け取るより、急騰していたリスクプレミアムがいったん剥がれた局面、と考えるほうが自然でしょう。原油下落の記事で示された安心感には、まだ条件が付いています。

据え置きの先にある「議論の温度」

FOMCを巡っては、調査対象のエコノミスト104人が据え置きを予想する一方、先物市場には利上げを織り込む動きも残っています。この差が大きいほど、政策金利の発表だけで市場の反応を読むのは難しくなります。

据え置きでも、声明文がインフレを強く警戒し、利上げ票やタカ派的な反対意見が増えれば、米金利とドルが上昇しやすくなります。反対に、原油安を踏まえて追加利上げへの距離が示されれば、BTCには安心材料です。今回のFOMCは「上げるか、据え置くか」だけでなく、委員の温度差がどちらへ動いたかまで確認したい場面です。FRBの会合日程

強気材料には、まだいくつか条件がある

20万ドル予想と、あと7票の距離

CLARITY法案が成立すれば、BTCが20万ドルへ向かうとの予測が報じられました。数字の大きさに目を奪われますが、その予測市場で20万ドル到達に付けられた確率は25%です。基本レンジも9万5,000~13万ドルに置かれており、20万ドルは中心予想ではなく、規制整備と資金流入が重なった強気ケースに当たります。

さらに、上院で審議を進めるには60票が必要とされる一方、現時点で固まっている支持は53票です。ここでは価格目標より、残り7票を確保できるか、8月7日までに手続きが進むかが先になります。CLARITY法案の記事は、強気材料が「期待」から「通過条件の確認」へ移ったことを示しているように思います。

Strategyが買わなかった4週間

Strategyは4週連続でBTCを購入せず、3,588 BTCを売却しました。それでも保有量は843,775 BTCに上ります。売却額は約2.16億ドルで、同社が確保している約32.25億ドルの準備金と比べれば、BTC保有方針を全面的に変えたと判断する規模ではなさそうです。

気になるのは、株価と保有BTC価値の比率を示すmNAVが約1.03まで低下し、追加購入の採算ラインとされる1.22を下回っていることです。企業がBTCを買う意思を持っていても、株式市場から有利に資金を調達できなければ購入速度は落ちます。Strategyの記事からは、企業需要を「保有意欲」だけでなく「調達余力」と一緒に考える必要が出てきたことが分かります。

決済インフラは引き続き静かに前へ

韓国のKB国民銀行は、JPMorganのKinexysを利用した貿易決済を実施しました。また、Coinbaseのブライアン・アームストロング氏は、AIエージェントがステーブルコインで自律的に支払う構想を示しています。

どちらも今日のBTCを直接押し上げる材料ではありません。それでも、暗号資産やブロックチェーンが「保有する商品」から「決済を動かす仕組み」へ広がる流れは続いています。価格への影響は遅れて現れやすいテーマですが、ステーブルコイン供給やオンチェーン決済量が増え始めれば、実需の裏付けとして効いてくる可能性があります。KB国民銀行の記事

65,000ドル回復を支えたのは誰だったか

ETHの上昇率がBTCを上回った理由

ETHは約1,958ドルまで上昇し、24時間の上昇率ではBTCを上回りました。同時に、ETHの清算額は約1億3,412万ドルとBTCの2倍を超えています。上昇に合わせて売り方の買い戻しが連鎖し、値幅を広げた可能性が高そうです。

Funding Rateはプラスですが、極端な水準ではありません。短期筋は増えているものの、すでにロング一色という状況でもないため、2,000ドルを現物出来高の増加とともに越えられるかが次の確認点になります。

ETFは週間黒字、直近は流出

BTC現物ETFは7月24日に2.401億ドル、ETH現物ETFは7,070万ドルの純流出でした。一方、直近5営業日を合計すると、BTCは約3,390万ドル、ETHは約1.038億ドルの純流入です。1日だけなら弱く見え、週間で見れば資金はまだ残っています。

それでも、現物主導の反発と評価するには補強が必要です。Bybitの現物CVDはBTC、ETHともにマイナスで、Coinbase Premiumも7月24日時点で-0.0884%でした。米国の現物投資家が強く追いかけたというより、薄い現物需要の上で先物が価格を押し上げた形に近いでしょう。

次の買い手候補は増えているか

ステーブルコイン供給は約3,098.8億ドルで、30日間では0.81%減少しています。取引所のBTC残高も減っているため、売却可能なBTCが絞られている点は支えになりますが、新しく市場へ入る待機資金まで増えているわけではありません。

この組み合わせでは、下値は固くなりやすい一方、上値を追うにはETF流入の再開やCoinbase Premiumの改善が欲しくなります。66,900ドルを越える場面で現物CVDもプラスへ転じれば、今回の反発はより持続性のあるものへ変わっていきそうです。

昨日から変化したポイント

昨日までは、地政学リスクと原油上昇がインフレ懸念を強める構図でした。今日はイランの条件付き攻撃停止で原油が下がり、マクロ面の圧力がひとつ軽くなっています。ただし、FOMCを前に金利の不確実性は残っているため、追い風が全面的な安心へ変わったわけではありません。

暗号資産の内部では、ETHの相対的な強さが数字として鮮明になりました。その一方で、清算額の大きさと現物CVDの弱さも確認され、反発の評価は「価格が戻った」から「誰の買いで戻ったか」へ進んでいます。

規制と企業需要についても、話が一段具体的になりました。CLARITY法案は残り7票、StrategyはmNAV 1.22が追加購入の目安です。昨日までの期待材料に、実現を左右する数字が付いたことが今日の差分です。

BTCは66,900ドルを越えられるか

現在地は63,300~66,900ドル

BTCは20日・50日移動平均線を上回り、短期の形は改善しています。上値では直近高値の66,900ドル、下値では50日線に近い63,300ドルが分岐点になりそうです。

シナリオ条件想定レンジ
強気66,900ドルを終値で上抜け、ETF流入・現物CVD・Coinbase Premiumも改善69,500~72,000ドル。勢いが続けば74,200~76,100ドル
メインFOMCを通過しつつ、63,300~66,900ドル内で資金データを確認63,300~66,900ドル
弱気63,300ドルを割れ、OI減少とロング清算が重なる62,300~60,965ドル。地合い悪化時は57,750~54,000ドル

メインシナリオでは、FOMC前後の振れを挟みながら、63,300~66,900ドルでの持ち合いを想定します。66,900ドル突破に現物買いが伴えば上のレンジへ移りやすくなりますが、先物だけで越えた場合は、いったん上へ振れたあとに押し戻される展開にも注意が必要です。

Take-home message

① 原油安は暗号資産に追い風ですが、FOMCでは政策金利だけでなく、声明文と投票の割れ方まで確認したいところです。
② BTCとETHの価格は改善した一方、現物CVD、Coinbase Premium、ステーブルコイン供給には、上昇を広く支える資金の強さがまだ表れていません。
③ BTCは66,900ドルを現物買いとともに越えられるか、反対に63,300ドルを保てるかで、次の値動きの質が変わりそうです。

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