CLARITY Act審議入り失敗でBTCは7万5,000ドル台――原油108.75ドルと米10年5%が重なる
前日は、米株と半導体株が下がる一方、BTCは約7万9,300ドルへ上昇していました。しかし今回は、米上院で暗号資産の市場構造を定めるCLARITY Actの審議入り動議が否決され、BTCは約7万5,866ドルへ4.35%下落しました。Coinbaseも10.1%安です。
同時に、Brent原油は108.75ドル、米10年金利は5.010%へ上昇しました。つまり、暗号資産固有の政策失望に、原油高と金利上昇という市場全体の逆風が重なった一日です。
ただし、今回のBTC下落を現物ETFからの資金流出とはまだ言えません。直近確定した9月14日取引分では、BTC ETFに1億5,990万ドル、ETH ETFに1億2,110万ドルが流入しています。下落日に当たる9月15日分は未反映です。
一方、BTC先物の未決済建玉は前回から約3.5%減り、24時間清算は2.31億ドルへ増えました。確認できる範囲では、前日に積み上がったレバレッジの巻き戻しが進んでいます。
主要指標
| 指標 | 確認値 | 基準時点・出典 |
|---|---|---|
| BTC | 75,865.90ドル/24時間比-4.35% | 9/16 6:10 JST頃・CoinGlass |
| ETH | 2,397.11ドル/24時間比-7.75% | 9/16 6:10 JST頃・CoinGlass |
| BTC先物OI/24時間清算 | 519.57億ドル/2億3,103万ドル | 主要取引所集計、9/16 6:10 JST頃・CoinGlass |
| 米BTC/ETH現物ETF | 9/14取引分:+1億5,990万ドル/+1億2,110万ドル | 確定値。9/15分は締切時点で未反映・Farside BTC、Farside ETH |
| 日経平均/TOPIX | 63,484.10(-0.01%)/4,037.16(-0.52%) | 9/15終値・日経平均公式、JPX |
| S&P500/Nasdaq/ダウ | 7,585.73(-0.45%)/25,981.57(-0.78%)/52,093.11(-0.63%) | 米9/15終値・Reuters |
| 米2年/10年金利 | 4.680%/5.010% | 米9/15 16:43 EDT頃。10年は一時5.041%・WSJ、Reuters |
| DXY/ドル円 | 99.631(+0.15%)/一時155円超 | 米9/15終盤・Reuters |
| Brent/WTI原油 | 108.75ドル(+2.9%)/105.83ドル(+4.38%) | 米9/15清算値、1バレル・Reuters |
| 金現物 | 4,293.29ドル/約-0.1% | 米9/15 13:45 EDT、1トロイオンス・Reuters |
暗号資産価格とデリバティブは9月16日朝、株・債券・為替・原油は9月15日の各市場、ETFフローは9月14日の米国取引分で、同一時点ではありません。Farsideの9月15日欄は全銘柄が未入力であり、表示上の合計0.0を純流入ゼロとは扱っていません。
Funding、現物CVD、ステーブルコイン供給は、前回と同一条件で比較できる最新値を締切までに確認できず、方向判断から外しました。
CLARITY Actの審議入り失敗がBTCの相対的な強さを崩す
49対50の否決が規制の空白を長引かせる
米上院は、CLARITY Actの審議入りに必要な討論終結動議を賛成49、反対50で否決しました。通常必要な60票に届かず、11月の中間選挙前に議会が休会へ入るため、近い時期の再審議は難しくなりました。米上院の投票記録、Reuters
これは暗号資産の禁止ではありません。法案が目指したのは、どの暗号資産をSECとCFTCのどちらが監督するかを法律で安定させることです。
審議が止まったことで、当面は規制当局のルールと解釈に依存し、政権交代や訴訟で枠組みが変わる可能性が残ります。
市場ではBTCが約4%安、Coinbaseが10.1%安、Strategyが5.4%安となりました。Reuters
BTCそのものより取引所株の下落が大きいのは、価格だけでなく、米国内で事業を拡大するための規制の確実性が後退したためです。
ETF流入後の建玉減少がレバレッジ解消を示す
9月14日の米現物ETFにはBTCで1億5,990万ドル、ETHで1億2,110万ドルが入りました。前日のBTC上昇には現物資金の裏付けが一部あったことになります。
ただし、その資金が今回の下落でも残ったかは、9月15日分の確定を待たなければ分かりません。
BTC先物OIは538.57億ドルから519.57億ドルへ約3.5%減り、清算額は約9,207万ドルから2億3,103万ドルへ増えました。価格と建玉が同時に減ったため、少なくとも前日に増えたポジションの一部は解消されています。
清算の売買別内訳を同一条件で確認できないため、全額をロング清算とはみなしません。
現物原油136.75ドルが先物108.75ドル以上の逼迫を示す
ヤンブー積み出し停止が代替需要を米国産へ移す
サウジアラビアは、東西パイプライン攻撃後に紅海側のヤンブー港で原油積み出しを停止し、欧州向けの9月後半の一部貨物を取り消しました。
Brentは2.9%高でしたが、WTIは4.38%高と、より大きく上昇しました。欧州の買い手が代替となる米国産原油へ向かうとの見方が、WTIを押し上げたためです。Reuters
さらに、数週間以内に受け渡す北海Forties原油は1バレル136.75ドルまで上がりました。11月渡しのBrent先物とは油種も受渡時期も異なるため、単純比較はできません。
それでも、将来価格より「すぐ必要な現物」の価格が高い事実は、製油会社の調達が先に逼迫していることを示します。Reuters
復旧見通しの幅がインフレ判断を難しくする
米エネルギー長官は送油が数日以内に戻るとの見方を示しました。一方、Reutersが取材した関係者の推計は、部分再開を伴う早期復旧から5〜6週間まで分かれ、Goldman Sachsの評価幅も「非常に早い」から8週間です。Reuters
予想の幅が大きいときは、一つの発言より実際の積み出しを優先します。
ヤンブーの再開、Saudi Aramcoの供給割当、取り消された貨物の代替が確認できれば、供給不安は後退します。先物だけが反落しても、現物価格と運賃が高いままなら、企業や家計へ届くコスト圧力は残ります。
米10年5%でもAI資金は接続技術と株式調達へ残る
上場株は借入コストを嫌い、民間資金は接続技術へ残る
米10年金利は一時5.041%、終盤も5.010%でした。S&P500の11業種ではエネルギーだけが2.3%上昇し、NYSEでは値下がり銘柄が値上がり銘柄の2.56倍です。
金利上昇に弱い幅広い株式から、原油高の利益を受ける企業へ資金が移りました。
前日に5.9%下落した半導体指数は0.4%高にとどまり、急落分をほとんど戻していません。Reuters 高金利では、巨額設備を借入で先に作り、利益を後から回収する企業ほど評価が厳しくなります。
それでもAI投資そのものが止まったわけではありません。Intel出身者が設立したDelos Dataは、AIデータセンター内で半導体間の通信を高速化する技術へ1億ドルを調達しました。Reuters
GPUの台数を増やすだけでなく、既存設備を待たせず稼働させ、電力当たりの処理量を上げる部分へ資金が向かっています。
SB Energyの資金設計がデータセンターの負担先を映す
SoftBank Groupが支援するデータセンター開発会社SB Energyは、米国IPOの一環として日本の投資家へ最大5億ドルの新株を販売する計画です。
NvidiaはIPO価格で15億ドルを出資する予定で、OpenAIには約55億ドル相当のワラントが付与されています。Reuters
新株による資金調達は借入と違い、利払いを直接増やしません。ワラントは将来株式を取得できる権利で、55億ドルがそのまま現金で入った意味でもありません。
5%の国債利回りと競争する環境では、評価額の大きさより、誰が設備費を負担し、既存株主がどれだけ希薄化し、稼働後に現金を生めるかが重要です。
前日までとの差分とFOMC後の条件が次の判断を分ける
BTCの株式離れが一日で巻き戻る
前日は、米10年金利が5%を試し、米株と半導体株が下がっても、BTCは2.58%上昇しました。
今回はBrentが105.68ドルから108.75ドル、米10年金利が4.96%から5.010%へ上がり、CLARITY Actの審議入りも失敗しました。BTCは4.35%安、ETHは7.75%安となり、暗号資産の相対的な強さは続きませんでした。
同時に、前日は増えていたBTCのOIが約3.5%減っています。悪材料でも建玉が増え続ける状態ではなく、レバレッジの一部は整理されました。
ただし、下落日のETFフローが未確認である以上、「売り切った」とも「現物は買っている」ともまだ判断できません。
BTC中心の条件付きシナリオがFOMC後を分ける
- 下げ止まりの質が改善する条件:FOMCが0.25ポイント利上げしても連続利上げを強く示さず、米10年金利が終値で5%未満へ戻ることです。ヤンブーの部分再開と現物原油の低下が確認され、BTCが7万5,000ドル台を保ったままOIが急増せず、9月15日のETFに幅広い流出がなければ、政策失望後の価格調整は吸収されつつあります。
- 慎重姿勢を強める条件:FRBが追加利上げを明確に示し、10年金利が5%超で定着することです。原油の積み出し停止も続き、BTCが7万5,000ドル台を維持できない一方でOIが再び増え、ETF流出まで確認されれば、マクロ、現物需要、レバレッジが同じ悪い方向を向きます。
- 判断を保留する条件:BTCが反発しても、OIだけが戻り、ETFフローが伴わない場合です。また、先物原油が下がっても現物原油が高止まりするなら、インフレ圧力の解消とはみなしません。一つの市場だけで結論を出さず、金利、現物原油、ETFの順に確認します。
FOMC声明は9月17日3:00、記者会見は3:30(いずれもJST)の予定です。FRB
その後、日銀は9月17〜18日に会合を開きます。日本銀行 利上げの有無だけでなく、原油高を何回分の政策経路へ組み込むかが焦点です。
Take-home message
- CLARITY Actは成立を否決されたのではなく、上院で審議入りに必要な手続きが49対50で否決されました。規制の空白が長引くとの失望から、BTCは4.35%安、Coinbaseは10.1%安となりました。
- Brent先物は108.75ドルですが、早い受け渡しの北海原油は136.75ドルです。契約条件は異なるものの、製油会社が今すぐ必要とする現物の逼迫が強く、ヤンブーの実際の積み出し再開が最重要です。
- BTCのOIは約3.5%減り、レバレッジの一部は整理されました。ただし9月15日のETFフローは未確認です。FOMC後は、米10年金利が5%未満へ戻るか、現物原油が下がるか、ETF流出が広がるかをセットで確認します。
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