原油安でもBTCが戻らなかった理由――長期金利と細るETF流入を確かめる
悪いニュースが和らいできた翌朝、「耐え抜いた、、、ようやくこれで一気に回復だ!」とチャートを開いて、何も動いていないことがあります。材料だけを見て先に買い、価格がついてこないまま焦る。私も何度も通ってきた場面です。
今朝のBTCは、まさにその状態でした。原油は下がり、米国株も反発しました。それでもBTCは約8.4万ドルで、前回からほとんど戻っていません。
原油安は好材料ですが、長期金利の低下やBTCへの買いの強まりまでは確認できていません。今日は、改善した材料とまだ変わっていない部分を分け、週末に何が起きたら見方を変えるかを決めておきます。
原油が下がっても、長期金利の重さは残る
原油安の追い風を、金利からも確かめる
原油安がBTCの追い風になる経路の一つは、物価上昇への警戒が和らぎ、長期金利が下がることです。金利が下がれば、値動きの大きい資産にもお金が向かいやすくなります。原油安には企業の燃料費や家計の負担を軽くする働きもあり、金利を経由するのはその伝わり方の一つですが、今回はこの金利面の支えが強まったかを確かめます。ECB・原油安の経済への影響
25日は原油が約2%下がった一方、米10年金利の低下はわずか0.01ポイントで、30年金利は逆に上がりました。長期金利の低下が買いを後押しする状況が、はっきり強まったとは言えません。Reuters・原油、米財務省・国債利回り
原油が下がっても、家計の物価不安は残る
金利を考えるうえで、もう一つ確認したいのが家計の物価不安です。9月のミシガン大学消費者信頼感では、1年先のインフレ期待が4.0%から4.6%へ上がりました。実際の物価上昇率ではありませんが、家計がこの先の値上がりを警戒していることを示します。ミシガン大学、Reuters・消費者信頼感
もちろん、長期金利はこの数字だけで決まるわけではなく、今後の政策金利の見通しや、長くお金を貸すリスクへの上乗せ分も影響します。ここでは、物価への不安がまだ残っていることを確かめる材料として扱います。ニューヨーク連銀・長期金利の構成要因
原油安を支えた停戦・供給回復への期待も、まだ実現していません。イランのアラグチ外相は、条件付きでホルムズ海峡を再開する7日間の計画を示したと説明しましたが、米国との合意や、実際に海峡が再開されたという発表ではありません。原油価格が下がることと、実際に運べる原油が増えることは別です。Reuters・イラン
WTIの下落には、米国の軽油輸出制限を巡る思惑も含まれています。輸出が制限されれば製油所の稼働が落ち、米国内の原油需要が減るという連想です。世界の供給不足が解消する話とは違い、制限自体もまだ決まっていません。Reuters・軽油輸出
米株を支えたのは、AIの個別材料
Microsoftの新機能が、収益化への期待に
では、長期金利がほとんど下がらないなかで、なぜ米株は上がったのでしょうか。支えの一つが、AIの個別材料です。Microsoftは25日、CopilotのHome、Code、Autopilotを発表し、日常的な利用と、使った分だけ課金する仕組みを組み合わせる方向を示しました。同社株は3.7%上昇しています。Microsoft公式、Reuters・米株
こうした個別企業への期待は、BTCには直接及びません。米株が反発したことだけを根拠に、BTCの上昇を期待することはできない理由がここにあります。市場全体に共通する金利の影響と、個別企業の材料は分けて見る必要があります。
なお、新機能には今後数週間の展開や限定プレビューが含まれます。株価の上昇は収益化への期待であって、利用が増えて計算にかかる費用を上回る利益が出るかは、これから確かめることです。
AIの焦点は「需要があるか」から「資金を回収できるか」へ
同じAI関連でも、設備側には慎重さが残ります。Reutersによると、データセンター向け電力を手がけるSB Energyは、SECからの追加質問への対応で上場に向けた売り込みの開始を延期しました。投資家の間では、評価額や大口顧客への依存を警戒する声もあります。関係者の話に基づく報道で、上場中止が決まったわけではありません。Reuters・データセンターIPO
AI関連を一括りにせず、ソフトの課金で稼ぐ側と、先にお金を借りて設備をつくる側に分けると、評価が分かれる理由を考えやすくなります。金利が高いままなら、新たな借入や借り換えに頼る側ほど、資金調達の負担が重くなります。
BTC現物ETFの買いは続いているが、細ってきている
ETFの買い越しは残るが、額は前日から約45%減った
BTC現物ETFを通じた資金流入も、勢いは弱まっています。前回は未集計だった24日のBTC現物ETF(取引所で株のように売買できる、BTCを裏付けにした投資商品)は、1億9,070万ドルの純流入でした。23日の3億4,690万ドルから約45%減っています。Farside・BTC
ETFを通じた買いが残っていることは分かります。ただ、それだけでBTC市場全体の買いが売りを上回ったとか、25日の値動きの原因までは分かりません。調査締切時点では25日分の各銘柄がまだ入力されておらず、合計欄の「0.0」を流入ゼロとは読めません。
先物の整理は進んでも、売りが終わったとは言えない
BTC先物の建玉(まだ決済されていない先物契約の残高、OI)は、前回の約570.71億ドルから約555.45億ドルへ減りました。強制的に決済された額(清算額)も縮小しています。ただ、ドル建ての建玉は価格が動くだけでも増減し、清算額の集計期間も毎回ずれます。これだけで売りの整理が終わったとは判断できません。CoinGlass
ステーブルコイン(ドルなどに価値を連動させた暗号資産)の時価総額は、1日の変化が前回のマイナスからプラスに戻りました。潜在的な買い余力を考える材料ですが、決済や担保にも使われるため、増えた分がそのままBTCの買いに向かうとは限りません。DefiLlama
Bitgetの出金停止は、価格とは別に確かめる
補填の説明があっても、出金できる状態に戻ったとは限らない
25日の報道で、Bitgetが約3億5,160万ドルの不正流出を受け、出金を停止したことが明らかになりました。不正送金を検知したのは24日です。同社は自己資金で損失を補填し、利用者の資産は安全だと説明していますが、これは会社側の説明です。Reuters・Bitget
締切までに、出金の再開は確認できませんでした。入金と取引は続いていると報じられていますが、「売買できる」ことと「資産を外へ移せる」ことは別の状態です。CoinDesk
この件が、BTCの小幅な下落の原因とは断定できません。ただ、該当する取引所を使っている人にとっては、相場の方向より先に、公式の出金状況と、自分の資産が一か所に集まりすぎていないかを確かめる意味があります。
週末は、値動きで見方を変える
見方を変える条件を、先に決めておく
原油安という良いニュースが出ても、長期金利はほとんど下がらず、確認できたETFの流入額も細っています。だから私は、ニュースだけで反転を決めず、次の条件で見方を変えることにしています。目標価格を置くより、何が起きたら判断を直すかを先に決めておくほうが、焦らずに済むからです。
- 上向きに見直す条件。 同じ取引所の4時間足(4時間ごとに区切った値動き)で、直近の戻り高値(下落途中で一度戻したときの高値)を終値で上回り、その後の押し目でも安値を切り上げることです。25日分のETFへの流入が続き、原油と長期金利も落ち着いていれば、反発を支える材料が複数あると評価しやすくなります。
- 判断を保留する条件。 ETFに買いが残っていても高値の更新が続かず、元の値動きに戻ることです。ニュースで反転と決めず、価格の確認を待ちます。
- 警戒を強める条件。 BTCが安値を更新し、そこにETFからの資金流出や清算の拡大が重なることです。原油と長期金利も上がれば、需給と外部環境の両方から見直します。
週末に見るのは、価格の高値と安値
週末は米国ETFの取引がありません。25日分の集計が出ても、それは金曜の話で、週末のBTCの値動きは別に確認する必要があります。なお、Funding(無期限先物の買い手と売り手の間で定期的にやり取りされる資金調達料)と現物CVD(現物市場の成行買いと成行売りの差の累積)は、比較できる値を取得できなかったため、今回は現物主導の動きとも先物主導とも判断していません。
週末に見るのは、4時間足で高値と安値が切り上がるかどうかです。月曜の朝には、25日分のETF集計と、週末のBTCの高値・安値を確かめます。原油と米10年金利は、週明けの取引再開後に確認します。
「戻るはず」という期待と、実際に戻り始めたことは別です。その区別を週末のうちにつけておけば、月曜の朝に材料だけを見て飛びつかずに済みます。
今回確認した数値
| 指標 | 確認値 | 基準時点・出典 |
|---|---|---|
| BTC/ETH | 83,921.60ドル(24時間比-0.58%)/2,693.16ドル(同+0.35%) | 9/26 6:14 JST取得の表示値。BTC、ETH |
| 米BTC/ETH現物ETF | 9/24:+1億9,070万ドル/+6,610万ドル | 全掲載銘柄の入力済み集計。後日修正の可能性あり、調査締切時点では9/25分は未集計。BTC、ETH |
| BTC先物OI/24時間清算 | 約555.45億ドル/約6,655万ドル | CoinGlass対象取引所の集計、9/26 6:14 JST取得。清算はロング・ショート合計。CoinGlass |
| ステーブルコイン時価総額 | 3,073.3億ドル(1日+0.43%、7日+0.95%) | 9/26 6:14 JST取得の表示値。DefiLlama |
| S&P500/ナスダック総合/ダウ | 7,743.41(+0.51%)/27,068.72(+0.48%)/51,828.62(+0.93%) | 米9/25終値、括弧内は前日比。Reuters |
| 米2年/10年/30年国債利回り | 4.81%/5.17%/5.49% | 米9/25の財務省日次系列。前日比-0.06/-0.01/+0.02ポイント。米財務省 |
| ドル円 | 157.22円(ドルが対円で1.01%下落) | 米9/25ニューヨーク午後の報道値で、終値ではありません。Reuters |
| Brent/WTI原油先物(期近) | 104.32ドル(-2.1%)/92.41ドル(-2.3%) | 米9/25の清算値、1バレル当たり。Reuters |
暗号資産のページには価格の更新時刻が明示されていないため、取得時刻を記載しています。暗号資産の24時間騰落率と米株の前日比は、同じ時間帯を比べた数値ではありません。
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