BTCは6万ドル台から7.8万ドルへ―現物改善と過熱が同居した8月第4週
8月第4週の暗号資産市場は、ここ数週間とは明らかに違う動きを見せました。
BTCは週前半の6万3,000〜6万5,000ドル台から一気に上昇し、一時7万9,000ドル台へ。ETHやXRP、SOLをはじめアルトコインにも資金が広がりました。
ただ、今回の上昇を「強気相場が戻った」の一言で片づけると、大切な部分を見落とします。
今週は、ETFへの実際の資金流入、米財務省による長期国債買い戻し拡大、ショートスクイーズ、Funding Rate上昇がほぼ同時に起きました。
つまり、現物側の改善は本物です。一方で、上昇速度を大きくしたのはレバレッジ市場でもありました。
今週は「BTCが上がった週」というより、これまで不足していた現物資金が戻り始め、その上にショート清算が重なった週として整理すると、市場の変化が見えやすくなります。
主要指標
※価格・センチメントなどは8月24日夜時点、週次データは主に8月17〜23日を使用しています。
| 指標 | 現在・今週の状況 | 見方 |
|---|---|---|
| BTC価格 | 約77,000〜78,000ドル、7日で約+22% | 6週間続いたレンジを上抜け |
| ETH価格 | 約2,460ドル、週中に約+29%規模の上昇 | BTC以外にも資金が拡散 |
| BTC現物ETF | 週間約+19.2億ドル | 5営業日連続流入。先週から最大の変化 |
| ETH現物ETF | 週間約+6.97億ドル | 前週の流出から大きく反転 |
| Funding Rate | 0.01%近辺、週中には20カ月ぶり高水準 | 強気化の一方、ロング過熱に注意 |
| BTC Open Interest | 約557億ドル | 高水準だが、BTC建てOIは上昇局面で減少 |
| 清算 | 8/21は24時間で約12.4億ドル、うちショート約10.6億ドル | 初動の上昇をショートスクイーズが増幅 |
| Coinbase Premium | 上昇中もマイナス圏、約-0.11→-0.046へ改善 | 米国現物需要は改善したが未確認部分が残る |
| Fear & Greed | 66「Greed」、1週間前は34「Fear」 | センチメントが短期間で急変 |
| ステーブルコイン総供給 | 約3,031.6億ドル、7日で+23.9億ドル(+0.79%) | 市場全体の待機資金は小幅改善 |
| CEXステーブルコイン準備金 | 約640億ドル | 2025年末約800億ドルからは依然20%減 |
BTCの足元価格とOIはCoinGlassで確認できます。BTCは7日で約22%上昇し、OIは約557億ドルです。
Fear & Greedは現在66まで上昇していますが、1週間前は34でした。
ステーブルコイン総供給は約3,031.6億ドル、7日間で約23.9億ドル増えています。
1.今週最大の変化は「ETFが戻った」こと
先週までは、マクロ改善だけではBTCが動かなかった
先週までは、インフレ指標が落ち着き、株式市場が強くても、BTCは6万ドル台前半で横ばいでした。
理由の一つが資金フローです。
ETFから資金が流出し、Coinbase Premiumも長期間マイナス。マクロ環境だけを見ると上がってもおかしくないのに、BTCそのものを積極的に買う資金が確認できない状態でした。
今週はここが変わりました。
米国BTC現物ETFには8月17〜21日の5営業日すべてで資金が入り、週間流入は約19.2億ドル。ETH ETFにも約6.97億ドルが流入しました。両者合計では約26億ドルで、2025年10月以来最大規模です。
8月20日だけでもBTC ETFには約6.06億ドルが流入し、5月1日以来最大となりました。
これは今週の上昇を考えるうえでかなり重要です。
「価格が上がったから強気になった」のではなく、これまで弱かったETFフローそのものが反転した。
先週との最大の差はここです。
2.ただし、上昇のすべてが現物買いだったわけではない
ショートスクイーズが上昇速度を大きくした
8月20〜21日の値動きでは、大規模なショート清算が発生しました。
8月21日には24時間の暗号資産市場全体の清算額が約12.4億ドルに達し、そのうち約10.6億ドルがショートでした。
BTCは長く6万2,000〜6万7,000ドル付近のレンジに閉じ込められていました。
「上がれば売る」が機能していたため、上値にはショートが積み上がります。
その状態で6万7,000ドルを突破すると、
価格上昇
→ ショート清算
→ 買い戻し
→ さらに価格上昇
→ 次のショート清算
という連鎖が発生します。
今回の急騰にはこの力がかなり働きました。
Coinbase Premiumはまだプラスになっていない
ここで一つ気になるのがCoinbase Premiumです。
BTCが20%以上上昇する過程でも、Coinbase Premium Indexはマイナス圏に残りました。数値自体は約-0.11から-0.046まで改善しましたが、プラス転換には至っていません。
Coinbase Premiumがマイナスということは、米国系スポット市場が海外市場以上に積極的にBTCを買っている状態ではありません。
ここが面白いところです。
ETFには約19億ドル入っている。
しかしCoinbaseではまだ明確なプレミアムがついていない。
したがって今回の上昇は、
「現物需要がないショートスクイーズ」
でも、
「完全な現物主導ラリー」
でもありません。
ETFという本物の資金流入が土台を作り、その上昇をショートスクイーズが増幅した。
この見方が一番近いと考えています。
3.FundingとOIを見ると、次は「過熱」を確認する段階
BTCのFunding Rateは週前半に20カ月ぶりの高水準まで上昇しました。
これはロング側へポジションが偏ったことを意味します。
ただしOIを見ると、少し違う景色もあります。
ドル建てOIは上昇した一方、BTC建てOIは上昇局面で約8.7%減少しました。つまりBTC価格が急騰したにもかかわらず、新しいレバレッジロングだけが大量に積み上がったわけではありません。
ここから読み取れるのは、
前半:ショートの解消によるデレバレッジ
後半:上昇を見たロング側のFunding上昇
という流れです。
そのため、今後Fundingがさらに上昇しながらOIまで急増するなら注意が必要です。
価格上昇と同時にレバレッジロングまで増えてくると、次は逆方向のロング清算が起きやすくなるからです。
Fear & Greedも34から66まで一気に改善しています。
これは市場環境の改善を示す一方、わずか1週間で心理がFearからGreedまで動いたことも忘れたくありません。
4.ETH・アルトにも資金は広がった。ただし「アルトシーズン」はまだ早い
ETHは一時2,430ドルを突破し、1週間で約29%上昇しました。
8月20日のETH ETF流入は約2.21億ドル。4日間では約5.12億ドルに達し、大口ウォレットからは取引所外へのETH移動も確認されました。
BTCだけではなくETHにもETF資金が同時に入ったことは、今回のラリーの厚みを増しています。
XRP、SOL、HYPEなどにも資金が広がり、8月19〜22日の3日間でBTCを除く暗号資産時価総額は約2,150億ドル増加しました。
ただしAltcoin Season Indexは49。一般的なアルトシーズン判定の75にはまだ届いておらず、BTCドミナンスも約59.7%です。
したがって現段階は、
「アルトシーズン確定」ではなく、BTC上昇を起点にリスク許容度がアルトへ広がり始めた段階
と整理する方が自然です。
5.マクロでは金利問題が消えたわけではない
今週のBTC上昇を後押しした重要材料が、米財務省による長期国債買い戻しの拡大です。
米財務省は10〜30年ゾーンの買い戻し上限を、1回20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増すると発表しました。
長期金利の上昇を抑える期待がドル安とBTC買いにつながりました。
一方でFOMC議事要旨を見ると、政策金利は据え置かれたものの、3人の参加者は0.25%の利上げを支持していました。原油高や中東情勢も議論されています。
つまり、
財務省の流動性支援はBTCに追い風。
しかし高金利そのものが消えたわけではない。
先週から続くAI設備投資、国債供給、原油、各国長期金利上昇という問題は残っています。
今週はBTCがそれを上回る資金流入を得た、という位置づけです。
先週までとの差分
| 先週まで | 今週 |
|---|---|
| インフレ鈍化でもBTCは6万ドル台 | BTCは7万ドル台後半へ |
| BTC ETFは流出基調 | 5営業日連続流入、週間+19.2億ドル |
| Coinbase Premiumは明確に弱い | まだマイナスだが改善 |
| ETH優位は小さな兆候 | ETH ETFに約6.97億ドル流入 |
| Fear領域 | Greedへ急上昇 |
| 反発の現物裏付けが不足 | ETFという現物系資金の裏付けが出現 |
| レンジ相場 | 6週間レンジを上抜け |
| 主な懸念は需要不足 | 次の懸念は短期過熱と上昇維持力 |
先週は「好材料があるのにBTCへ資金が来ない」ことが問題でした。
今週はその問題が一部解消しました。
ただしCoinbase Premiumがまだマイナスである以上、米国スポット需要まで完全に戻ったとは判断できません。
今後ここがプラスへ転換すれば、今回の上昇をさらに評価しやすくなります。
BTC価格予想―次は8万ドルを定着できるか
8月18日時点では、BTCは約6万4,000ドルで、100日線約6万6,000ドル、200日線約6万9,000ドルが上値抵抗でした。
今週はその両方を一気に突破しました。
次の分岐は7万8,000〜8万ドルです。
強気シナリオ:8.0万ドル突破 → 8.3万〜8.8万ドル
条件は、
- BTCが8万ドルを終値ベースで明確に突破
- BTC ETFへの純流入が継続
- Coinbase Premiumがゼロ〜プラスへ転換
- Fundingが極端に上昇せず、OIも急増しない
この組み合わせなら、短期的には8万3,000〜8万8,000ドルが次の価格帯になります。
実際、4時間足RSIの過熱を指摘する分析でも、上方向では8万3,000〜8万8,000ドルが意識されています。
メインシナリオ:7.2万〜8.0万ドルで消化
現時点ではこれを中心に見ます。
1週間で20%以上上昇しているため、いったん上昇を消化する時間があっても不自然ではありません。
ETF流入が続きながらFundingが低下し、7万2,000〜7万5,000ドルを維持できるなら、むしろ健全な調整です。
その後8万ドルを再び試せる形になります。
弱気シナリオ:7.2万ドル割れ → 6.9万〜6.7万ドル
ETFが再び流出へ転じ、Coinbase Premiumが悪化し、Funding・OIだけが高い状態で7万2,000ドルを割るなら警戒です。
次は6万9,000〜7万ドル、その下では以前のレンジ上限だった6万6,000〜6万7,000ドルが重要になります。
ここまで戻ると、今週のブレイクが本物だったのかをもう一度確認する局面です。
Take-home message
- BTCの今週の上昇はショートスクイーズだけではなく、BTC・ETH ETFへの大規模な資金流入が伴った点で、先週までの反発とは質が変わりました。
- 一方でCoinbase Premiumはまだマイナスで、Fundingとセンチメントも急速に強気へ傾いているため、次は「どこまで上がるか」以上に、7万ドル台で現物需要が継続するかを確認したい局面です。
- ETF流入継続、Coinbase Premiumのプラス転換、Fundingの沈静化が同時に確認できれば、8万ドル突破を単なるショートスクイーズではなく、次の上昇局面への移行として評価しやすくなります。
この記事が参考になった方は、Xでも最新の市場メモを更新しています。
暗号資産・AI・米国株を、資金フローと需給の視点から読みたい方はぜひフォローしてください。
