週明けの朝、Nasdaqの最高値更新と、BTCの8.7万ドル接近が同じ画面に並びました。「リスクオンなら、暗号資産もこのまま続くはず」と感じた方も多いと思います。ただ、資金がどこに入り、どこで止まったかを分けて見ると、景色は少し違います。

週明けの資金は、利益の伸びを説明しやすいAI株には入りましたが、暗号資産を本格的に追うところまでは広がっていません。止めているのは金利です。米10年債利回り(米国の長期金利の代表的な指標)は5.31%へ上がり、ドル指数(主要通貨に対するドルの強さを示す指数)も102.19へ続伸しました。BTCは一時86,949ドルまで上げた後、85,700ドル台へ戻っています。

暗号資産では、価格より先に見ておきたい数字の更新がありました。米現物BTC ETF(BTCを実際に保有して運用する上場投資信託)の10月2日分は、確定値で速報の約6倍に増えました。現物の買いは、当初見えていたより強かったことになります。一方、10月5日分は締切時点で内訳が出ていません。建玉(先物で決済されずに残っているポジションの総額)が増えたままBTCが高値から押し戻されたので、私はここから「ETFの買いが続くか」と「レバレッジ(証拠金を元手に、元本以上の金額で張る取引)だけが膨らんでいないか」を分けて確認します。

主要指標では株高・債券安・ドル高がそろった

指標水準変化・基準時点
BTC85,730ドル24時間で−0.30%、高値86,949ドル・安値85,050ドル(10月6日6:15 JST)
ETH2,711.18ドル24時間で+0.16%、高値2,735.81ドル・安値2,683.19ドル(同)
BTC先物建玉552.1億ドル前回確認の542.5億ドルから約+1.8%、CoinGlass集計(同)
S&P 5007,773.95+0.66%、10月5日終値
Nasdaq総合27,477.31+1.05%、10月5日終値・最高値更新
米10年債利回り5.31%+3.4bp、10月5日米国市場
ドル指数102.19+0.28%、10月5日米国市場
Brent原油100.32ドル/バレル−1.89%、10月5日清算値

暗号資産の価格・建玉はCoinGlassおよび市場価格、株・金利・原油はReutersの10月5日市場まとめを基準にしています。ETFフローは取引日単位のため、上記のリアルタイム価格とは時点が異なります。複数の取引所をまたいだFunding(先物価格を現物に近づけるため、買い手と売り手の間で定期的にやり取りされる調整金)、清算額(証拠金不足で強制的に決済された金額)、現物CVD(現物市場での成行の買いと売りの差を積み上げた値)は同じ条件で確かめられなかったため、今回は判断材料に含めていません。

ETFの確定値は現物の買いを裏付けたが、増えた建玉が上昇の中身を見えにくくしている

確定値で、BTCとETHの資金差がはっきりした

10月2日の米現物BTC ETFは、確定値で見ると速報を大きく上回る資金流入でした。Farside Investorsの更新値では合計+1億8,990万ドルで、前回締切時点の速報値+3,170万ドルから上方修正されています。内訳はIBITが+1億5,820万ドル、FBTCが+2,930万ドル、その他が+240万ドルです。

同じ日、ETHからは資金が抜けていました。米現物ETH ETFの同日フローは−3,740万ドルへ下方修正されています。資金は暗号資産全体に一様に入ったのではなく、売買が厚くETFの需要も大きいBTCを選んで入った、ということです。

ただし10月5日分は、両ETFとも各商品の欄が「—」のままです。自動集計欄の0.0は、確定したゼロではありません。米国取引日の確定フローがそろうまでは、週明けのBTC上昇を新しい現物の買いだけで説明しないようにしています。

8.7万ドル手前で押し戻され、建玉だけが増えた

価格はほぼ動いていないのに、建玉だけが増えました。BTCは86,949ドルまで上げた後、締切時点では85,730ドルで、前回締切の85,835ドルからほぼ横ばいです。一方、CoinGlassのBTC先物建玉は552.1億ドルで、前回確認の542.5億ドルから約9.6億ドル増えています。

建玉の増加は、それだけでは強気とも弱気とも言えません。新しく買った人が増えても、新しく売った人が増えても、建玉は同じように増えるからです。上昇が現物の買いに支えられているなら、次の三つがそろうはずです。10月5日のETFフローが流入で確定すること、85,000ドル台を保つこと、高値に再挑戦するときに建玉だけでなく現物の出来高(実際に売買された量)も増えることです。逆に、ETFからの流出と建玉の減少が同時に起きれば、今回の上昇はレバレッジ主導だった可能性が高まります。

利上げ確率が下がっても、5.31%の長期金利とドル高が暗号資産を止めている

サービス価格が下がらず、債券は売られた

9月の米ISM非製造業景況指数(サービス業の景況感を示す指数で、50が拡大と縮小の境目)は、景気は減速しても物価の上昇は止まっていないことを示しました。指数は54.9で、8月の55.4、市場予想の55.2を下回っています。一方、支払価格指数(企業が仕入れなどで支払う価格の動き)は72.6から74.0へ上がり、2022年7月以来の高水準です。Reutersによると、10月利上げの確率は23.8%まで下がった一方、12月利上げは88.1%が織り込まれて(市場価格に反映されて)います。

市場では、株が買われ、債券が売られました。米10年債利回りは3.4bp(0.034%ポイント)上がって5.31%、ドル指数は0.28%高の102.19です。

5%を超える利回りが、BTCに向かう資金を手前で止める

BTCが止まった理由は、資金の置き場所で説明できます。米国債を持つだけで年5%を超える利回りが得られる間は、利息のつかないBTCへ資金を移す理由が薄くなります。BTCを持つことは、その5%を手放すことでもあるからです。同じ資金でも、利益の伸びを数字で示せるAI株には入り、利息も利益も生まないBTCは後回しにされます。今回の「AI株は最高値、BTCは失速」という分かれ方は、この順番で説明がつきます。

そのため私は、10月利上げ観測の後退よりも、長期金利とドルが高止まりしている事実のほうを重く見ています。

原油安は追い風だが、金融環境を緩めるほどではない

原油は下がりました。中東からの輸出増とG7の供給拡大方針が売り材料になり、Brentは1.89%安の100.32ドル、WTIは1.84%安の89.43ドルで引けています。エネルギー価格の低下はインフレ懸念を和らげ、AI株の追い風になりました。

ただし、Brentはなお100ドル台にあり、サービス価格も上がっています。原油安だけで金融環境(お金の借りやすさ・集めやすさ)が緩んだとは言えません。BTCの条件が良くなったと判断するには、10年債利回りとドル指数がそろって下がる必要があります。

AI株に資金が集中し、電力と金利が投資回収を試している

Nvidia主導の最高値は、市場全体の強さを意味しない

Nasdaqの最高値は、一部の大型AI株が引っ張ったものでした。Nasdaqは1.05%高の27,477.31で最高値を更新し、Nvidiaは2.1%上がって過去最高値、時価総額は5.76兆ドルとなりました。Microsoftは1.5%、MetaとTeslaは約2%上がっています。一方でReutersによると、米取引所の出来高は168億株と、直近20日平均の173億株を下回りました。指数は強くても、買いに加わった銘柄の広がりは限られていました。

資金はリスク資産全体に広がったのではなく、利益の伸びを説明しやすい大型AI株に集まったということです。暗号資産まで資金が回ってくるかを確かめるなら、Nasdaqの高さだけでなく、小型株や暗号資産関連株に買いが広がるか、ドルと金利が下がるかを見る必要があります。

データセンター投資は前倒しされても、電力の制約からは逃れられない

AIのデータセンター投資は、計画が消えたのではなく前倒しされています。Goldman Sachsは米データセンター容量(必要な電力量で測った規模)の2026年末予想を5GW引き上げて64GWとし、2027年末予想は5GW引き下げて90GWとしました。電力需要は2026年に12GW、2027年に17GW増える見込みです。ただ、同じ記事では、地域でのAIデータセンター建設を支持する回答は14%にとどまっています。

日銀の内田副総裁も、AIが需要と資産価格を押し上げる一方、関連企業の大型起債(社債の発行による資金調達)が長期金利を押し上げ、利益が伴わなければ調整のリスクがあると指摘しました。AI投資の焦点は、設備投資の額そのものから、電力の確保、資金調達のコスト、利益を回収する速さへ移っています。半導体・電力・冷却設備に資金が流れ続けても、そのための借り入れが長期金利を押し上げれば、高い株価は正当化しにくくなります。AI投資の拡大そのものが、AI株の評価を抑える側に回り始めています。

CFTCの連邦枠組み案が、取引所の参入条件の輪郭を示した

規制は前進したが、施行まではまだ距離がある

米CFTC(商品先物取引委員会)は10月5日、暗号資産の小売向け証拠金・レバレッジ取引を対象にした包括的な枠組みについて、規則制定事前通知(正式な規則案の前に、論点を示して意見を募る文書)を公表しました。CFTCの一次資料は、統一的な連邦制度、相場操縦などの不正防止、「暗号資産市場」という新しい取引所区分を検討対象にしています。コメント期限は連邦官報への掲載から60日です。

報道では、参加する取引所に準備資産証明(顧客から預かった資産を実際に保有していることの証明)と相場操縦の防止策を求め、州ごとの送金業免許に代わる任意の連邦枠組みを想定しているとされています。ただし、具体的なレバレッジ上限はまだ示されておらず、最終規則でも施行済みの制度でもありません。BTCの短期的な値動きの材料というより、米国でレバレッジ付きの現物取引を提供する取引所にとって、コストと競争条件が見え始めた段階です。

前日から、見方を一つ修正する

前日までの焦点は、BTCが回復した8.5万ドル台を、OPEC+会合後の原油と米金利の動きが支えられるかでした。今回、原油は実際に下がり、Nasdaqも最高値を更新しました。それでもサービス価格の強さから10年債利回りとドルは上がり、BTCは8.7万ドル手前で失速しました。

同時に、10月2日のETF確定値で、BTCの現物の買いは上方修正されました。そこで見方を「需要が足りない」から「現物の買いは確認できたが、高い金利と増える建玉が上値を抑えている」へ修正します。CFTC案は中期的な制度整備としては前進ですが、当日の値動きの主因とは分けて扱います。

BTCはETF・建玉・金利の三つで見方を切り替える

値幅を当てるより、条件で分けたほうが判断を誤りにくい

  • 上向きが続く場合:10月5日以降のETFフローが純流入(流入が流出を上回ること)で確定し、BTCが85,000ドル台を保ったまま86,949ドルを再び上回り、建玉の増加に現物の出来高が伴う場合です。現物の買いが主導する上抜けと判断しやすくなります。
  • 持ち合いが続く場合:ETFが小幅またはまちまちで、10年債利回りが5.3%近辺、ドル指数が102台に残る場合です。AI株高が支えになっても暗号資産への資金の広がりは限られ、8.5万ドル台を中心に方向を探す展開が続きます。
  • 下向きに見直す場合:ETFが純流出となり、BTCが日中安値の85,050ドルをはっきり下回る一方で建玉が急減する場合は、ロング(買いポジション)の手じまいを疑います。建玉が増えたまま価格だけが下がる場合は、新しいショート(売りポジション)が増えている可能性もあるため、Fundingと清算の方向を確認します。

持ち帰ることは三つある

  1. ETFの数字は、速報から確定値で大きく変わることがあります。10月2日のBTC ETFは確定値で速報の約6倍になり、BTCを選ぶ現物の買いは見た目より強いものでした。
  2. Nasdaqの最高値は、暗号資産の追い風を意味しません。5%を超える長期金利とドル高が続く間は、資金はAI株にとどまり、暗号資産まで回りにくくなります。
  3. 価格だけで見方を変えないことです。ETFの確定値、建玉、現物の出来高の三つがそろってから判断を更新します。
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ABC Ledger 編集部
暗号資産・AI・米国株を、資金フローや需給、マクロ環境から分析するABC Ledger編集部です。ETFフロー、Funding Rate、Open Interest、現物CVDなどを組み合わせ、市場の背景を分かりやすく整理しています。

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