8月3日の暗号資産市場には、BTCへ直接影響する材料が重なりました。Strategyによる1,638 BTCの売却、Coldcardの脆弱性を突いた大規模流出、米国の雇用統計リスク、そしてホルムズ海峡を巡る不透明感です。

最初はBTCにとって重いニュースが並んだように見えます。しかし、BTCは一時62,300ドルまで下落した後、63,700ドル前後まで回復しました。Binanceの現物CVDもプラスであり、売却材料を受け止める買いは確認できます。

一方、米国勢の需要を示すCoinbase Premiumはマイナス、BTC ETFも週間では純流出、ステーブルコイン供給も減少しています。したがって、現在の反発は「強い現物需要を伴う本格反転」よりも、売り材料を消化しながら下値を確認している段階と考えるのが妥当です。

ETHにはETF資金が相対的に向かっています。ただし、ETHのOpen Interestは価格以上に増えており、反発の一部にはレバレッジも参加しています。本記事では、この需給の違いとBTCの価格シナリオを整理します。

※市場データは8月4日0:13〜0:35 JSTに取得しています。

主要指標

指標現在の状況見方
BTC価格約63,700ドル50日線約63,366ドルと200週線約63,775ドルが重なる分岐点
ETH価格約1,866ドル50日線約1,785ドルの上、20日線約1,890ドルの下
Fear & Greed Index28・Fear(前日27)心理は小幅改善しましたが、警戒感は残っています
BTC現物ETF7月31日-2.654億ドル、直近週-6,150万ドル価格反発を支える米国の現物需要はまだ弱い状態です
ETH現物ETF7月31日+900万ドル、直近週+1,000万ドルBTCより小さいながら、資金流入を維持しています
Funding RateBTC+0.0042%/8時間、ETH+0.00225%/8時間ロング優勢ですが、過熱した水準ではありません
Open InterestBTC約106.1億ドル、ETH約58.4億ドル※Binanceの契約数量は24時間でBTC+0.26%、ETH+2.96%
Binance現物CVDBTC+7,990万ドル、ETH+1,050万ドル買いは優勢ですが、BTCの方が現物買いの強さが明確です
Coinbase Premium約-0.119%Coinbase価格がBinanceを下回り、米国需要はまだ弱めです
24時間清算公開集計の不一致により数値採用を保留OIが急減しておらず、大規模なレバレッジ整理は確認できません
ステーブルコイン供給約3,053.8億ドル、7日で-25.8億ドル市場全体の待機資金は依然として減少しています

※Open InterestはBinanceとBybitの合計です。Fundingは両取引所のOI加重値です。Coinbase PremiumはCoinbase BTC/USDとBinance BTC/USDTの同時刻価格から算出した参考値です。

価格とセンチメントはBinanceAlternative.me、ETFフローはFarside Investors、FundingとOIはXoomar、ステーブルコイン供給はDefiLlamaを参照しています。

Strategy売却とColdcard被害――BTCに重なった二つの材料

StrategyのBTCは「積み上げる資産」から「管理する資産」へ

Strategyは7月27日から8月2日にかけて1,638 BTCを売却し、約1億470万ドルを調達しました。売却後も842,138 BTCを保有しており、今回の売却は総保有量の約0.2%です。

保有量に対しては小規模ですが、意味は数量だけではありません。BTCを一方向に買い続けてきた企業が、優先株の配当や自社株買いのためにBTCを使い始めたからです。

企業によるBTC保有が終了したわけではありません。ただし、今後は「何枚保有しているか」と同時に、「どの条件で売却するか」も市場が確認する必要があります。

BTCがこの発表後に63,000ドル台後半まで戻した点は、売却がある程度消化されたことを示します。一方、企業保有BTCが永久に市場へ出てこないという前提は修正が必要です。

Coldcard問題はBTCネットワークではなく保管方法の問題

Coldcardでは複数回の攻撃が確認され、1,000 BTC超、1,196のウォレットが影響を受けたと報じられました。問題はBTCネットワークそのものではなく、秘密鍵生成に関わるウォレット側の実装です。

それでも影響は小さくありません。セルフカストディは「取引所に預けない安全な保管方法」として重視されてきましたが、ハードウェアを使えば自動的に安全になるわけではないことが示されたからです。

Coldcardへの第4波の攻撃やBIP-110の延期は、短期的にはBTCのリスクプレミアムを高めます。ただし、今回の問題をBTCプロトコル全体の欠陥として読むのも正確ではありません。

価格への直接的なリスクは、盗難BTCが市場へ移動することと、自己保管への不安が一時的な売りにつながることです。

ETHの回復には根拠があるが、現物だけで動いているわけではない

ETFフローはETHへの資金移動を示している

ETH ETFは7月に大幅な資金流入を記録しました。集計元によって差はありますが、Farside基準では7月のBTC ETFが約1.73億ドルの純流入だったのに対し、ETH ETFは約3.47億ドルの純流入です。

ETHの市場規模はBTCより小さいにもかかわらず、絶対額で約2倍の資金が入っています。これは、ETHの回復を支える数値として重要です。

価格でも、直近30日ではBTCの上昇率をETHが上回り、ETH/BTCも改善しました。アルトコインとBTCの高値・安値が同じ時期に形成されないという見方には、一定の根拠があります。

OIの増加は「売り切り完了」とは別の話

一方、ETHのOpen Interestは24時間で約2.96%増えました。価格上昇率よりOIの増加率が大きく、今回の戻りには新しいレバレッジポジションも参加しています。

Fundingは低いため、すぐに過熱を警戒する状態ではありません。これは反発を続ける余地になりますが、現物CVDはBTCほど強くありません。

したがって、現段階では「アルトを売る人が完全に売り切った」と断定するより、ETF資金とデリバティブ資金がETHへ先に動き始めた可能性を確認する局面です。

さらに、8月第1週のトークンアンロックやBinanceによる6銘柄の上場廃止も予定されています。供給増加や取引経路の縮小は銘柄ごとに異なるため、ETHの強さをアルトコイン全体へそのまま当てはめることはできません。

反発の質を決めるのは米国需要と市場全体の待機資金

Binanceでは買われても、Coinbaseではまだ弱い

Binanceの現物CVDはBTCで約7,990万ドルのプラスでした。少なくとも直近24時間では、成行買いが成行売りを上回っています。

一方、Coinbase Premiumは約-0.119%です。CoinbaseのBTC価格がBinanceより低く、米国の機関投資家やドル建て投資家の需要はまだ強くありません。

この組み合わせからは、現在の反発が世界全体で均一に起きているのではなく、Binanceを含む海外市場の買いが先行していると読めます。ETFフローがBTCで純流出になっていることとも整合します。

ステーブルコイン供給はまだ反転していない

ステーブルコイン供給は約3,053.8億ドルで、7日間に約25.8億ドル減少しました。

ステーブルコインは暗号資産市場の待機資金に近い存在です。供給減少が続く間は、BTCやETHが反発しても、資金が市場全体へ広がりにくくなります。

Fundingが低く、BTCのOIも数量ベースではほぼ横ばいであるため、ロングの過熱による急落リスクは高くありません。しかし、大規模な清算を経てポジションが完全に整理された状態でもありません。

原油はホルムズ海峡再開協議の報道で一時9%下落しました。原油安はインフレ懸念を和らげる材料ですが、イラン側は合意を否定しており、価格低下が定着するかは不透明です。

加えて、米国の雇用統計が金利・ドル・株式市場を動かします。適度な雇用減速なら利下げ期待を支えますが、急激な悪化なら景気不安から暗号資産にも売りが出る可能性があります。

昨日までとの差分

昨日までの中心的な見方は、BTCが63,000ドル付近を維持していても、BTC ETFの週間純流出、マイナスのCoinbase Premium、ステーブルコイン供給減少により、米国の現物需要が弱いというものでした。

今日変わった点は次の4つです。

  • Strategyによる売却が可能性ではなく、数量と資金用途を伴う実際の財務行動として確認されました。
  • BTCはStrategy売却とColdcard問題を受けても62,300ドルから反発し、Binance現物CVDもプラスになりました。
  • Coinbase Premiumは前回確認した-0.0959%から約-0.119%へ弱まり、米国需要の回復は確認できませんでした。
  • ステーブルコインの7日間減少額は約27.7億ドルから約25.8億ドルへ縮小しましたが、供給増加には転じていません。

つまり、昨日までより「売り材料を吸収する力」は見えましたが、「市場全体へ新しい資金が入った」という確認には至っていません。

BTC価格予想――1週間から1カ月のシナリオ

BTCは約63,700ドルで、50日線と200週線が重なる重要な水準にあります。日足RSIは約48で、売られ過ぎでも買われ過ぎでもありません。

シナリオ条件BTC価格の目安
強気64,400ドルを終値で回復し、66,300〜67,000ドルを突破。ETF改善やCoinbase Premiumのゼロ接近も確認68,700〜69,200ドル。1カ月では72,000ドル方向
メイン現物CVDはプラスでも、ETF・Coinbase Premium・ステーブルコイン供給が改善しない1週間は61,300〜67,000ドル、1カ月は60,000〜69,200ドル
弱気61,300ドルを割り、60,000ドルを週足終値で失う。雇用統計、金利、地政学も悪化57,800ドル、その下は55,000ドル前後

ETHは1,930〜2,000ドルを終値で突破できれば、2,150〜2,200ドル方向が見えてきます。反対に1,785ドルを割り、1,710ドルも維持できなければ、1,600ドル付近が次の候補です。

アルトコインの回復を確認するうえでは、ETH価格だけでなくETH/BTCの0.0302突破が重要です。0.0276を下回る場合は、ETHの相対回復がいったん後退したと判断しやすくなります。

Take-home message

  1. Strategy売却とColdcard問題を受けてもBTCは反発しましたが、企業保有BTCと自己保管に対する市場の前提は変化しています。
  2. ETHの相対的な強さはETFフローに支えられていますが、OI増加と弱い現物CVDを踏まえると、アルトコイン全体の底打ちを示す段階ではありません。
  3. BTCは64,400ドル回復と67,000ドル突破で69,200ドル方向が開ける一方、60,000ドルを週足で失えば57,800ドル方向への警戒が必要です。
ABOUT ME
ABC Ledger 編集部
暗号資産・AI・米国株を、資金フローや需給、マクロ環境から分析するABC Ledger編集部です。ETFフロー、Funding Rate、Open Interest、現物CVDなどを組み合わせ、市場の背景を分かりやすく整理しています。

この記事が参考になった方は、Xでも最新の市場メモを更新しています。
暗号資産・AI・米国株を、資金フローと需給の視点から読みたい方はぜひフォローしてください。