7月の米雇用統計は予想を大きく下回り、追加利上げへの警戒を後退させました。米国株と債券、金が上昇し、米金利とドルは低下しています。一見するとリスク資産への追い風ですが、原油安も重なり、景気への安心感だけで進んだ上昇ではありません。

暗号資産では、米上院がCLARITY法案の手続きを一段進め、BTC・ETHの現物ETFにも資金が入りました。一方、BTCは6.5万ドル付近でほぼ横ばいです。ETFには現物需要があるものの、ステーブルコイン供給の伸びは小さく、買いの広がりまでは確認できていません。

この記事では、雇用統計後の資金移動、AI電力投資、CLARITY法案をつなぎ、BTC価格への反映を考えます。

主要指標

指標最新値見方
BTC価格$65,002、24時間+0.05%好材料に対して価格反応は小さい
ETH価格$1,920、24時間+0.44%BTCより強いが、上昇の質は要確認
Fear & Greed Index30(Fear)8月8日確定値。心理はまだ慎重
BTC現物ETF+$101.7M8月7日確定。5日連続流入だが金額は減速
ETH現物ETF+$49.6METHAとFETHを中心に流入
Funding取得不可取引所別の8時間値を正確に再現できず
Open InterestBTC $48.41B/ETH $26.22BCoinGlass収録市場合計。前日比は未確認
24時間清算BTC $1.495M/ETH $3.134M各資産の先物清算。市場全体の合計ではない
Coinbase Premium取得不可最新の正確な指数値を確認できず
ステーブルコイン供給$300.622B、1日+0.03%待機資金は微増だが加速感は弱い

暗号資産価格、OI、清算はCoinGlassの確認値です。取得できなかったFundingとCoinbase Premiumは推測で補っていません。

米雇用統計が金利と資金の向きを変えた

雇用者数は減少し、過去分も下方修正

米労働省の7月雇用統計では、非農業部門雇用者数が2.3万人減少しました。市場予想は8万人増でした。

5月と6月も合計10.3万人下方修正されました。単月だけでなく、これまで考えられていた雇用の勢いも見直されています。

9月利上げ確率は約55%から40%へ低下しました。S&P 500は0.62%、Nasdaqは1.30%上昇。米2年金利は4.20%、10年金利は4.64%、DXYは99.61へ低下しました。市場横断の反応には、追加利上げへの警戒後退が表れています。

株高だけでは景気の強さを判断できない

失業率は4.1%へ低下しましたが、労働参加率も61.4%へ下がっています。平均時給は前年比3.2%で、雇用統計だけでは政策転換を決められません。

金は2.6%上昇して4,414ドル付近、Brent原油は0.7%下落して約82ドルでした。株高・金高・原油安の組み合わせは、金利上昇の後退と成長不安が同時に取引されたことを示します。次のCPIが確認材料です。

AI投資の焦点がGPUから電力へ広がる

Nvidiaが系統接続を持つ企業へ投資

Nvidiaが電力インフラ企業Lanciumへ最大30億ドルを投資するとの報道が出ました。当初20億ドルで約20%を取得し、追加10億ドルは系統接続などの条件付きです。両社の正式確認はなく、現段階では報道として扱います。

数字で読み直すと電力が中心になる

最初はデータセンター増強に見えます。しかし追加投資の条件に系統接続が入っています。GPUがあっても、電力、冷却、送電網がなければ稼働しません。AI投資を見る数字は、半導体の台数から確保電力と稼働時期へ広がっています。

恩恵と資金循環のリスク

送配電、発電、冷却、建設には需要が広がる可能性があります。一方、Nvidiaが利用側のインフラへ資金を出し、将来需要を支える構図でもあります。最終需要と供給者側の資金循環は分けて確認したいところです。

CLARITY法案は観測から議会手続きへ進んだ

手続き採決を設定する動議を提出

米上院共和党トップのJohn Thune氏は、休会明けにCLARITY法案の手続き採決を行うための動議を提出しました。Reutersによると、法案はデジタル資産の区分と監督当局を整理する連邦ルールを目指します。

60票と最終条文が次の確認点

ただし手続き採決には60票が必要で、少なくとも民主党8票の支持が必要とされています。政府高官の暗号資産事業への制限や、ステーブルコイン報酬を巡る条文も流動的です。

成立すれば取引所、発行体、RWA事業者は規制コストを見積もりやすくなります。現時点で価格へ織り込めるのは手続き前進までで、BTCの持続的反応には票数と最終条文が必要です。

BTC6.5万ドルの反発を資金フローで読む

ETFには買いがあるが、流入額は減速

8月7日の米BTC現物ETFは1億170万ドル、ETH現物ETFは4,960万ドルの純流入でした。BTC ETFは5営業日連続流入で、現物の受け皿は残っています。

ただしBTC ETFは、8月5日の2億4,440万ドルから7日の1億170万ドルへ縮小しました。売りへ転じてはいませんが、買いの加速もありません。

ステーブルコイン総供給は3,006.22億ドルで、日次+0.03%、週次+0.19%です。待機資金は減っていませんが、相場全体を押し上げるほどの増加でもありません。

現物主導か、レバレッジ主導か

BTC先物OIは484.1億ドル、ETHは262.2億ドルです。24時間清算はBTCが149.5万ドル、ETHが313.4万ドルで、大規模清算による上昇には見えません。

OIの前日比、取引所別Funding、Coinbase Premiumの最新値は確認できませんでした。レバレッジ主導とする根拠はありませんが、強い米国現物買いとも断定できません。

ETF流入が日次1.5億ドルを再び超えるか、ステーブルコイン供給が加速するか、Coinbase Premiumがプラスへ戻るかを確認したい局面です。

昨日からの違い

  • CLARITY法案:9月採決へ進むとの観測から、手続き採決を設定する実際の動議提出へ進みました。ただし60票と最終条文は未確定です。
  • 米雇用統計:雇用減の初動から、株、債券、ドル、金、原油をまたぐ資金移動まで確認できました。
  • AI投資:半導体需要の話から、系統接続を持つ電力インフラへNvidiaが資本を投じる可能性が具体化しました。
  • 暗号資産:政策材料は前進しましたがETF流入は減速し、実際の買いが続くかを確認する段階へ移りました。

BTC価格予想

以下は今後1週間程度を想定した条件付きシナリオです。

シナリオ条件BTC価格レンジ読み方
強気$65,500を維持、ETF流入が日次$150M超へ再加速、DXYが100未満$66,800〜$68,000政策期待を現物買いが追認する展開
メインETF流入は継続するが加速せず、CPI待ち$63,800〜$66,500下値は支えられる一方、上抜け材料も不足
弱気$63,800割れ、ETFが流出へ転換、CPI上振れで米金利上昇$60,500〜$62,000金利と資金フローの両面から売り直される展開

ETHは1,950ドルを回復しETF流入が続けば2,020〜2,100ドル、1,850ドルを割れば1,720〜1,800ドルが確認範囲です。価格とETF、Funding、OI、ステーブルコイン供給が同じ方向を向くかを確認します。

Take-home message

  1. 米雇用統計は追加利上げへの警戒を後退させましたが、株高と同時に金高・原油安が起きており、景気への安心感だけで進んだ上昇ではありません。
  2. CLARITY法案とAI電力投資は中長期の資金配分を変える可能性がありますが、前者は60票、後者は系統接続と最終需要の確認が必要です。
  3. BTCにはETFの現物需要が残る一方、流入額と待機資金の加速はまだ弱く、6.5万ドルからの上抜けには買いの広がりが必要です。

ABOUT ME
ABC Ledger 編集部
暗号資産・AI・米国株を、資金フローや需給、マクロ環境から分析するABC Ledger編集部です。ETFフロー、Funding Rate、Open Interest、現物CVDなどを組み合わせ、市場の背景を分かりやすく整理しています。

この記事が参考になった方は、Xでも最新の市場メモを更新しています。
暗号資産・AI・米国株を、資金フローと需給の視点から読みたい方はぜひフォローしてください。