7月の米雇用統計は、暗号資産だけでなく株式、債券、ドル、金の値動きをまとめて変えました。非農業部門雇用者数が予想を大きく下回り、追加利上げへの警戒が後退したためです。

BTCは約64,900ドルまで回復しました。一見すると金融相場の再開に見えますが、ETF流入の一方でCoinbase Premiumはマイナス、ステーブルコイン供給も30日では減少しています。レバレッジだけの反発ではないものの、幅広い現物買いがそろった状態でもありません。

今日の記事全体から得られる結論は、市場が「追加利上げへの警戒」から「8月12日のCPIで雇用統計後の反応を確認する局面」へ移ったことです。本稿では、雇用統計の読み方、BTC反発の中身、ETHとの違い、今後1週間から1カ月の価格条件を整理します。

主要指標

指標確認値見方
BTC価格約64,900ドル20日・50日線を回復。長期線はまだ上
ETH価格約1,915ドル1,900ドル台を回復。2,000ドルが次の壁
Fear & Greed Index30・Fear価格反発に対して心理は慎重
BTC現物ETF8月6日+1.376億ドル8月3〜6日は累計約+7.64億ドル
ETH現物ETF8月6日+9,210万ドル直近3営業日は累計約+2.06億ドル
FundingBTC+0.005%、ETH-0.0004%ロングの過熱感は小さい
Open InterestBTC約493億ドル、ETH約264億ドルBTCは雇用統計前から約9億ドル増加
24時間清算BTC約4,010万ドル、ETH約3,160万ドル大規模なショートスクイーズではない
Coinbase Premium直近-0.1145%米国の幅広い現物需要は弱い
ステーブルコイン供給約3,004億ドル7日+0.16%、30日-0.77%
BTC取引所残高約271.38万BTC小幅減少。潜在的な売り圧力はやや低下

※価格、Funding、OI、清算は確認時点、ETFは確認できた8月6日分までです。ETFはFarside Investors、ステーブルコインはDefiLlamaを参照しています。

雇用統計が金利シナリオを変えた

弱い雇用者数と低下した失業率

米労働省によると、7月の非農業部門雇用者数は前月比2.3万人減でした。市場予想の約8万人増を大きく下回り、5月と6月も合計10.3万人下方修正されています。

この結果を受け、9月利上げ確率は直前の約67%から44%程度まで低下しました。ドル指数と米国債利回りが下がり、株式、金、暗号資産には買い戻しが入りました。雇用統計後のBTC反応が今日の中心材料になった理由は、暗号資産固有のニュースではなく、資産価格の前提となる金利見通しを動かしたからです。

ただし、失業率は予想の4.2%に対して4.1%へ低下し、平均時給は前年比3.2%上昇しました。企業調査と家計調査の差もあるため、「雇用の勢いは弱まったが、労働市場全体が崩れたわけではない」と読むのが近いでしょう。詳細は米労働省の公表資料で確認できます。

ここから重要になるのが8月12日のCPIです。物価も鈍化すれば、利上げ観測の後退が正当化されます。反対にCPIが上振れすると、雇用は弱いのに物価は高いという扱いにくい組み合わせになり、金利とドルが再上昇する可能性があります。

BTC反発の中身は「中程度」

ETFの買いは実在する

BTC現物ETFには8月3日から6日までの4営業日で約7.64億ドルが流入しました。価格の反発に、機関投資家が利用しやすいETF経由の現物需要が加わっている点はプラスです。

取引所残高も約271.38万BTCへ小幅に減少しており、需給面では下値を支えます。

米国現物と市場全体の待機資金はまだ弱い

一方、Coinbase Premiumは直近で-0.1145%でした。CoinbaseのBTC価格が海外市場より低く、ETF以外の米国現物買いが広がっていないことを示します。

ステーブルコイン供給も7日では0.16%増えていますが、30日では0.77%減少しています。暗号資産市場へ流入する待機資金が大きく膨らんでいるとは言えません。

BTCのOpen Interestは雇用統計前の約484億ドルから493億ドルへ増加しました。価格上昇に合わせてデリバティブのポジションも増えていますが、Fundingは+0.005%程度で、ロングへの偏りは限定的です。24時間清算もBTCで約4,010万ドルにとどまり、大量のショート清算だけで押し上げられた反発ではありません。

ETFの現物買い、穏やかなレバレッジ、取引所残高の減少は支えています。しかしCoinbase Premiumとステーブルコイン供給には弱さが残り、本格的な現物主導の判断にはもう一段の確認が必要です。

BTCが金や銀に出遅れているとの分析も、この評価と整合します。金融環境の巻き戻しは始まりましたが、その資金がBTCへ集中しているわけではありません。

ETHの相対的な強さと暗号資産固有の制約

ETHは約1,915ドルまで回復しました。Fundingはほぼ中立で、Open Interestも大幅には増えていません。ETH現物ETFには8月6日に約9,210万ドルが流入しており、1,980〜2,000ドルを越える場合は、BTCよりレバレッジ依存の小さい上昇になる可能性があります。

今日の記事では、RWAのDeFi預け入れ増加やAIエージェント決済も報じられました。翌日の価格を直接決める材料ではありませんが、ETHやステーブルコインにはETF、トークン化資産、機械間決済という複数の需要経路があります。

ただし、CLARITY Actの採決は9月以降へずれ込む可能性が高まりました。規制整備への期待は残っていても、短期のイベント材料としては後退しています。

Coldcardの問題や北朝鮮系ハッカーによる被害も、保管方法と利用者保護の課題を改めて示しました。金融環境が改善しても、すべてのアルトコインが一緒に上がるとは限りません。ETF流入、実需、流動性を確認できる銘柄から評価されやすい環境です。

昨日までとの差分

昨日までは、BTCの蓄積、クジラの買い、取引所残高といった市場内部のデータから、売り圧力が弱まる可能性を探る段階でした。今日は雇用統計という外部要因が、米金利、ドル、株式、金、BTCを実際に同時に動かしました。

また、CLARITY Actは短期間で進展する可能性を探る状況から、9月以降を待つ状況へ変わりました。暗号資産固有の規制期待より、当面はCPI、米金利、ETFフロー、現物需要が価格へ反映されやすくなっています。

蓄積観測が否定されたわけではありませんが、今日は金融環境の変化が実際の買い戻しにつながりました。

BTC価格見通し

シナリオ条件想定レンジ
強気CPI鈍化、日足67,000ドル超、ETF流入継続、Premium改善68,000〜70,300ドル。その後72,000〜75,000ドル
メインCPI待ち、Funding低位、現物需要は強弱混在63,300〜67,000ドル
弱気CPI上振れ、金利・ドル反発、62,300ドル割れ61,800〜60,000ドル。下抜けで57,500〜58,000ドル

メインシナリオは、CPIまで63,300〜67,000ドルで推移する展開です。BTCは20日線の約64,450ドルと50日線の約63,360ドルを回復していますが、100日線約68,050ドルと200日線約70,300ドルは上に残っています。

強気転換には、65,400ドル、66,400ドル、67,000ドルを順に越える必要があります。CPI鈍化に加え、ETF流入とCoinbase Premiumの改善がそろえば、68,000ドルから70,300ドルへ進みやすくなります。70,300ドルを日足で定着できれば、1〜4週間で72,000〜75,000ドルが次の範囲です。

弱気シナリオでは、CPI上振れによって金利とドルが反発し、BTCが63,300ドル、続いて62,300ドルを割るかを確認します。その場合は61,800〜60,000ドル、60,000ドルも失えば57,500〜58,000ドルへの調整を警戒します。

ETHは1,980〜2,000ドル超で2,060ドル、さらに2,150〜2,250ドルが視野に入ります。反対に1,800ドルを割れば、1,740ドル付近までの調整余地があります。

Take-home message

  • 雇用統計は追加利上げ観測を後退させましたが、8月12日のCPIが次の確認材料です。
  • BTCの反発はETFと穏やかなデリバティブ需要に支えられる一方、米国現物買いと市場全体の待機資金には弱さが残ります。
  • 67,000ドル超では上昇転換の可能性が高まり、62,300ドル割れでは再び60,000ドル方向への警戒が必要です。
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ABC Ledger 編集部
暗号資産・AI・米国株を、資金フローや需給、マクロ環境から分析するABC Ledger編集部です。ETFフロー、Funding Rate、Open Interest、現物CVDなどを組み合わせ、市場の背景を分かりやすく整理しています。

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