CPI鈍化で米株と金は上昇、それでもBTCが動かなかった理由
7月の米消費者物価指数は、総合が前年比3.4%、コアが2.5%へ鈍化しました。市場は9月の利上げ回避を織り込み、米国株と金は上昇しました。一方、BTCは6.3万ドル台でほぼ横ばいです。
最初は、BTCだけが好材料に反応できなかったように見えます。しかしデリバティブを確認すると、Fundingは小幅プラスで清算も限定的です。売られたというより、ETFなどの現物資金がまだ追随していません。
本稿では、CPI後の資金がAI株、金、BTCへどう分かれたのかを整理し、次に確認したい数字を明確にします。
主要指標
| 指標 | 確認値 | 見方 |
| BTC | $63,470、24h -0.28% | CPI後も横ばい。現物資金待ち |
| ETH | $1,882.24、24h +0.02% | BTCより相対的に底堅いが、ローテーションは未確認 |
| Fear & Greed | 27(Fear) | 前日29から低下し、心理は改善せず |
| BTC現物ETF | 最新確定日 +$7.8M | 8月11日分。12日分は未集計 |
| ETH現物ETF | 最新確定日 -$1.7M | 小幅流出 |
| BTC Funding | +0.0066% | Binance USDT無期限・8時間値。過熱は限定的 |
| BTC OI | $47.312B | 建玉は残るが、一方向への極端な傾きなし |
| BTC清算 | $20.434M | 市場全体・24時間。強制解消は小さい |
| Coinbase Premium | 取得不可 | 同一時刻の指数値を確認できず、推定しない |
| ステーブルコイン供給 | $300.815B、7d +0.14% | 待機資金は改善。ただし継続確認が必要 |
価格・デリバティブはCoinGlass、ETFはFarside、ステーブルコインはDefiLlamaを参照しています。更新時点や集計範囲の異なる数字は合算していません。
CPIは利上げ懸念を後退させた
総合3.4%、コア2.5%の中身
米労働統計局によると、7月CPIは前月比+0.1%、前年比+3.4%でした。食品とエネルギーを除くコアは前月比+0.2%、前年比+2.5%です。いずれも6月から前年比の伸びが鈍化しました。
市場が警戒していた上振れは起きず、9月会合の据え置き確率は約62%へ上昇しました。米2年債利回りは4.198%、10年債は4.682%へ低下し、金利上昇に弱い資産には追い風となりました。
ただし、エネルギー指数は前月比1.5%低下した一方、前年比では14.7%上昇しています。7月CPIには8月の原油反発も十分反映されません。今回の数字は利上げを急ぐ理由を弱めましたが、インフレ再加速の可能性まで消したわけではありません。
米株は上昇の幅も改善
S&P 500は0.26%、Nasdaqは0.54%上昇しました。上昇銘柄は下落銘柄の1.7倍で、11業種中8業種が上昇しています。VIXも14.55へ下がりました。
今日は指数と市場内部が同じ方向へ進み、CPI後の安心感が大型株以外にも広がりました。ただし、低いVIXは悪材料への備えが薄い状態でもあります。
AI需要は強い、それでも設備投資はさらに大きい
Nebiusの契約額と57億ドルの設備投資
Nebiusの4〜6月期売上は5.823億ドルで、AIクラウド部門は約6倍に成長しました。同社は10億ドル超の契約を4件獲得し、顧客コミットメントは400億ドル超、今年の前受金は90億ドル超を見込んでいます。
AI計算需要は供給を上回っており、同社は2026年の契約電力目標を4GW超から5GWへ引き上げました。
しかし、四半期設備投資は57億ドルで、売上の約10倍です。受注残は将来売上の可視性であると同時に、GPU、データセンター、電力を先に用意する義務でもあります。AI株を評価するときは、契約額だけでなく、前受金で投資を賄えるか、稼働開始が遅れないか、顧客が集中していないかを確認したいところです。
好決算でも下がるAI株がある
Cerebrasは年間売上見通しを8.80〜8.90億ドルへ引き上げ、四半期売上も前年比74.3%増となりました。それでも株価は時間外で14%以上下落しました。
OpenAIとの200億ドル契約への依存や、高い期待値が意識された可能性があります。同じ日にCoreWeave、Nebius、Super Microは大幅高でした。AI株は契約の分散、利益率、設備投資の回収速度で選別されています。
BTCにはマクロ改善より現物資金が必要
BTCは約6.347万ドルで、CPI後も大きく上昇しませんでした。金現物は0.9%上昇して4,406.64ドルとなり、米株も上昇しています。同じ利上げ回避材料を、BTCだけが十分に受け取らなかった形です。
デリバティブを見ると、BTCのFundingはBinanceで8時間+0.0066%、OIは473.12億ドル、24時間清算は2,043万ドルです。過熱したロング相場でも、大規模な投げ売りでもありません。
現物側では、米BTC ETFの最新確定値は780万ドルの小幅流入、ETH ETFは170万ドル流出です。8月12日欄は全商品がゼロ表示ですが、確認時点では未集計と判断し、確定値として使っていません。
一方、ステーブルコイン供給は3,008.15億ドルで、7日変化が+0.14%へ改善しました。ただし1日の変化では転換と断定できません。ETF流入、供給増加、Coinbase Premiumの改善が数日そろえば、CPIの効果がBTCへ届いたと判断しやすくなります。
マイナー株の上昇がBTC上昇とは限らない
RiotとAnthropicの契約は、191MWを20年間提供し、契約額は91億ドル、延長込み最大161億ドルです。電力設備を保有するマイナーが、AIデータセンターへ転換する価値を市場が評価しています。
ただしRiotのBTC保有は第2四半期に4,300枚減少しました。AI転換は収益を多様化しますが、設備投資をBTC売却で賄うなら短期的には現物供給が増えます。
CPI鈍化でも長期金利が下がり切らない理由
米国の7月財政赤字は4,320億ドルとなり、7月として過去最大でした。給付日のずれを調整しても3,330億ドルで、前年より18%増えています。年度累計は1.799兆ドルとなり、2025年度通年をすでに上回りました。
CPI鈍化は政策金利に近い2年債を下げやすくします。一方、巨額の財政赤字は国債供給を増やし、10年債など長期金利の低下を妨げます。このねじれは、借入依存のAIインフラ企業にも、キャッシュフローを生まないBTCや金にも影響します。
金は今回は利上げ回避を素直に好感しました。BTCは反応しませんでしたが、直ちに弱気と決める段階でもありません。金利低下が続き、暗号資産固有の資金が戻るかを分けて確認します。
昨日までとの差分
昨日はCPI前で、米株指数が下落する一方、上昇銘柄は下落銘柄の1.2倍でした。今日はCPIが予想通りに鈍化し、指数も上昇、騰落比率は1.7倍へ改善しました。警戒が後退したことを市場内部も確認しています。
AIでは、昨日のCoreWeaveに続いてNebiusも大型契約を示しました。需要の存在は一段確認され、焦点は売上成長から資本効率と電力確保へ移っています。
暗号資産では、ステーブルコイン供給の7日変化が-0.13%から+0.14%へ改善しました。しかしBTCは好材料へ反応せず、ETFも小幅流入です。現物資金の回復は始まった可能性があるものの、確認には数日必要です。
価格予想
強気シナリオ
米10年債が4.60%を割り、BTC ETFが明確な流入へ戻り、BTCが64,300ドルを突破する場合です。BTCは65,500〜67,000ドル、ETHは1,980〜2,050ドルを想定します。Nasdaqは26,900〜27,300、金は4,480〜4,550ドルを試す余地があります。
メインシナリオ
PPIを待ちながら米10年債が4.60〜4.80%に残る場合です。BTCは62,800〜64,800ドル、ETHは1,820〜1,930ドルの持ち合いを想定します。S&P 500は7,650〜7,850、ドル円は158〜160円を中心に推移しやすいと考えます。
弱気シナリオ
PPIや原油が再びインフレ懸念を強め、米10年債が4.80%を超え、BTCが62,500ドルを割る場合です。BTCは60,500〜61,800ドル、ETHは1,700〜1,760ドルを想定します。VIX上昇を伴えば、S&P 500は7,480〜7,620まで調整する可能性があります。
Take-home message
- CPI鈍化は米株と金を押し上げましたが、BTCには現物資金の裏付けがまだ足りません。
- AI需要は大型契約で確認できる一方、売上を大きく上回る設備投資と電力確保が利益への変換を左右します。
- 次はPPI、米長期金利、ETFフロー、ステーブルコイン供給を並べ、今日の反応が一日で終わらないかを確認します。
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