BTC ETFは4.6億ドル流出、ETHは逆行流入―原油100ドルと利上げ警戒の9月第2週
2026年9月第2週の暗号資産市場は、前週とはかなり違う姿になりました。
ビットコイン(BTC)は9月13日夜時点で約7万6,700ドル。過去7日では約4%下落しています。ETHも約2,475ドルまで押しましたが、週間下落率は約1%にとどまり、BTCより底堅く推移しました。SOLは約6.4%安、XRPも約5.5%安です。
しかし、今週もっとも重要なのは価格そのものではありません。
前週に約9.87億ドルが流入したBTC現物ETFは、今週約4.63億ドルの流出へ反転しました。その一方で、ETH現物ETFには約1.97億ドルが純流入しています。
つまり今週は、暗号資産から一斉に資金が逃げたというより、BTC・ETH・アルトの間で資金の選別が強まった1週間と見る方が実態に近そうです。
そこへ米インフレの再加速、100ドルを超えた原油、米金利上昇が重なりました。週末にはサウジアラビアの重要な原油迂回パイプラインまで停止しています。
暗号資産内部の需給と、マクロ環境の悪化。この2つを分けて見る必要があります。
主要指標はBTCの弱さとETHの底堅さを映した
BTCは8万ドル回復に失敗
| 指標 | 9月13日時点・今週の動き | 見方 |
|---|---|---|
| BTC | 約76,744ドル、7日間 -3.99% | 8万ドル回復に失敗 |
| ETH | 約2,475ドル、7日間 -1.0% | BTCに対して相対的に底堅い |
| SOL | 約99.6ドル、7日間 -6.4% | 100ドル近辺まで調整 |
| XRP | 約1.34ドル、7日間 -5.5% | ETF流入だけでは価格を支え切れず |
| BTC現物ETF | 9/8〜11 約-4.63億ドル | 4営業日すべて流出 |
| ETH現物ETF | 同期間 約+1.97億ドル | BTCと逆方向 |
| BTC Open Interest | 約513.7億ドル | レバレッジは残る |
| BTC Funding | 主要取引所で概ねプラス | ロング優位だが極端な過熱ではない |
| BTC清算 | 直近24時間 約2,513万ドル | 大規模な強制清算局面ではない |
| ステーブルコイン供給 | 約3,052.7億ドル、7日間 -0.05% | 新規待機資金はほぼ増えず |
| Crypto Fear & Greed | 63「Greed」(9/12) | 前週73からセンチメント後退 |
BTC価格・OI・清算はCoinGlass、ステーブルコイン供給はDefiLlamaを参照しています。Fundingは9月12日時点で主要取引所ではロング側が支払う状態でした。
前週との違いは明確です。
BTC価格が下落しただけではなく、BTC ETFから資金が抜け、ステーブルコイン供給も増えていません。
一方、ETH ETFには資金が残りました。
参考:CoinGlass「Bitcoin Overview」 / DefiLlama「Stablecoins」
BTC現物ETFは4日連続の流出に転じた
前週約10億ドル流入から一転
前週との最大の違いは、BTC現物ETFです。
米国市場がレーバーデーで休場だったため今週は4営業日でしたが、9月8日に4,660万ドル、9日に1億2,020万ドル、10日に2億8,270万ドル、11日に1,320万ドルが流出しました。
合計は約4億6,270万ドルの純流出です。
4営業日すべてがマイナスでした。
前週は約9億8,700万ドルが流入しています。
つまり、わずか1週間で機関投資家のBTCへの資金フローが反転しました。
ETF市場でも選別が鮮明に
BeInCryptoでも9月10日、BTC、ETH、SOLのETFがそろって流出する一方、XRPとHBARには資金が入ったことが報じられています。
市場全体をまとめて買う局面から、商品ごとに選別する動きへ変わってきました。
参考:Farside Investors「Bitcoin ETF Flow」 / BeInCrypto「ビットコイン・イーサリアム軟調もXRP ETFに資金流入」
ETHには約2億ドル、BTCとの温度差
週末に大型資金が流入した
一方、ETH現物ETFは違う動きを見せました。
9月8日は2,430万ドルの流出、9日は3,470万ドルの流入、10日は2,990万ドルの流出。そして11日に2億1,640万ドルの大幅流入となりました。
週間では約1億9,690万ドルの純流入です。
価格でもBTCが約4%下落したのに対して、ETHは約1%安にとどまりました。
取引所のETH供給も減少へ
オンチェーン側にも違いがあります。
BeInCryptoがGlassnodeデータを基に報じたところでは、取引所で保有されるETHは約1,550万ETHまで減少し、数年ぶりの低水準となりました。
2023年5月付近の約2,520万ETHから約38%減っています。
もちろん、取引所残高の減少だけで価格上昇を予測することはできません。
ただし、ETFには資金が入り、取引所へ売却可能なETHは減っている。
少なくとも今週のBTCとETHを同じ強弱で見るのは少し違います。
参考:Farside Investors「Ethereum ETF Flow」 / BeInCrypto「イーサリアム取引所保有量1,550万ETHに減少」
BTCは売り圧力低下だけでは8万ドルを維持できなかった
長期保有者の売り圧力は改善
BTC内部のデータも少し複雑でした。
BeInCryptoが紹介したCryptoQuantのデータでは、長期保有者のSOPRは1.2まで回復し、損失確定の売り圧力は緩和しています。
つまり、保有者が慌ててBTCを売っている状況ではありません。
足りなかったのは現物の買い
一方で現物需要は中立圏にとどまり、直近の反発は先物買いの影響が大きかったとされています。
これは今週のETFフローとも整合します。
「売り手が急増した」というより、8万ドルを超えてさらに買い上げる現物需要が弱かった。
BTCはゴールデンクロスを示現したものの、依然として50週移動平均線を下回っており、大きなトレンド転換までは確認できていません。
参考:BeInCrypto「なぜビットコインは売り圧力が減少しても8万ドルを維持できないのか」
PPIとCPIで利上げシナリオが復活
生産者物価からインフレ警戒が再燃
今週の暗号資産を抑えた最大の外部要因は、再び米金利でした。
8月の米生産者物価指数(PPI)は前月比0.4%上昇、前年同月比5.4%上昇。エネルギー価格は前月比4.2%上昇しました。
PPI発表後、市場が織り込む9月利上げ確率は約70%まで上昇しています。
CPIも市場予想を上回った
翌日のCPIも、総合が前月比0.4%、前年同月比3.4%。コアCPIは前月比0.3%と市場予想の0.2%を上回りました。
これを受け、9月FOMCでの利上げ確率は約85%まで上昇しました。
BTCにとって厄介なのは、単に「インフレが高い」ことではありません。
インフレが高い
→ FRBが利下げできない、あるいは再び利上げする
→ 米国債利回りが上昇する
→ リスク資産の相対的な魅力が低下する
という流れです。
米10年債利回りは一時5%目前まで上昇しました。
BTCにとって7万6,000ドルや8万ドルだけを見るより、こちらの方が重要な局面です。
参考:Reuters「US producer prices increase as expected in August」 / Reuters「Fed rate-hike case builds as inflation fails to cool」
原油100ドル、週末に前提がもう一段変わった
金曜日には原油反落で一息
そして、今週のインフレ問題をさらに難しくしているのが原油です。
Brent原油は一時109.97ドルまで上昇し、金曜日には104ドル台まで反落しました。それでも週間では8%を超える上昇です。WTIも100ドル台に乗せています。
金曜日だけを見れば、原油反落と米株反発で少し落ち着いたようにも見えました。
サウジの迂回パイプライン停止
しかし、週末に状況が変わりました。
サウジアラビアはドローン攻撃を受け、東部油田地帯と紅海を結ぶ東西パイプラインを一時停止しました。
このルートは日量400万〜500万バレルを運び、ホルムズ海峡を迂回する重要な輸送路です。
Reutersは13日、この停止が長引けば世界供給の約4%に相当する原油が失われる可能性があると報じています。
さらに同日、ホルムズ海峡では船舶への新たな攻撃も報告されました。
つまり来週は、金曜日の「原油が少し下がった」という前提をそのまま持ち込めません。
原油高→インフレ→米金利という経路が、再びBTCへ波及する可能性があります。
参考:Reuters「Saudis shut down oil pipeline」 / Reuters「Saudi pipeline outage threatens loss of 4% of global oil supply」
円高ショックは回避
3営業日で約3.7%の円高
日本から暗号資産を見るうえでは、円の動きも無視できません。
今週、円は3営業日で約3.7%上昇しました。
2024年8月には円キャリートレードの巻き戻しがBTC急落の一因となりましたが、今回は同じ規模のショックには発展しませんでした。
キャリー巻き戻しリスクは残る
ただし、ヘッジファンドでは円高へ賭ける動きが増えており、BeInCryptoは早期のキャリートレード解消が暗号資産市場から安価な資金を吸い上げる可能性を指摘しています。
今週は「円高でもBTCが耐えた」と評価できます。
一方で、円キャリー問題そのものが消えたわけではありません。
参考:BeInCrypto「ビットコイン、円高ショックを回避」
アルト市場ではレバレッジへの警戒
アルト先物建玉がBTCを上回った
アルト市場では全面的な資金流入より、個別テーマとレバレッジが目立ちました。
BeInCryptoによると、9月6日時点でアルトコインのパーペチュアル先物建玉がBTCを上回りました。
2024年12月以来の逆転です。
これはアルト市場への関心が高まっている証拠ではあります。
ただし、必ずしも現物資金が流入していることを意味しません。
プライバシーコインには資金が残った
SOLが週間6%超下落し、SUIも11%超下げている一方、プライバシーコインには資金が残りました。
BeInCryptoでは、BTCが昨年10月にピークを付けた水準と比較して、プライバシーコインセクターが唯一大きく上回っていることも報じられています。
ZECを中心としたテーマ相場は継続しました。
ここから「アルトシーズン」と判断するのは早そうです。
むしろ、市場全体の現物資金が増えていない中でレバレッジだけが増える銘柄には注意が必要です。
ステーブルコイン総供給額も約3,052.7億ドルで、7日間ではほぼ横ばいです。
前週のように待機資金そのものが増えている状況ではありません。
参考:BeInCrypto「ビットコイン上昇の陰でアルトコインにレバレッジの罠」
CLARITY法案は重要局面へ
9月15日に上院の手続き採決
規制面では、来週も重要なイベントがあります。
米上院の公式日程では、Digital Asset Market Clarity Act(H.R.3633)について、9月15日にクロージャー動議が成熟します。
これは法案そのものの最終可決ではなく、審議を前へ進めるための手続きです。
「可決か否決か」だけでは見ない
一方、BeInCryptoは共和党上院議員から「否決の可能性が高い」との発言が出ていることを報じました。
暗号資産業界側には、それを実際の票読みではなく最後の交渉材料と見る向きもあります。
規制の明確化そのものは中長期では大きなテーマですが、来週は単純な「可決か否決か」ではなく、まず手続き採決を通過できるかを見る必要があります。
参考:米上院「CLARITY法案日程」 / BeInCrypto「CLARITY法案漂流か」
来週はCLARITY・FOMC・原油の三重イベントへ
暗号資産とマクロ材料が同時に来る
来週は暗号資産固有のイベントとマクロイベントがほぼ同時に来ます。
9月15日にCLARITY法案を巡る上院手続きがあり、FRBは15〜16日にFOMCを開催します。
そして、その前提となる原油市場は週末に再び悪化しました。
確認する順番は原油からETFフロー
来週を見る順番は、
原油 → 米金利 → FOMC → BTC ETFフロー
が分かりやすいでしょう。
CLARITY法案は暗号資産固有の重要材料ですが、BTC市場全体を短期で動かす力は、現時点ではFOMCと原油の方が大きいと考えています。
BTCから資金が抜けても、暗号資産全体の撤退とは限らない
BTCとETHで資金の行き先が分かれた
9月第2週は、前週までの強い資金流入が一服しました。
BTC現物ETFからは約4.63億ドルが流出し、BTC価格も週間約4%安となりました。
一方、ETH現物ETFには約1.97億ドルが入り、ETHの取引所残高は数年ぶりの低水準です。
ここから読み取れるのは、単純な「暗号資産売り」ではありません。
BTCからは資金が抜けた。ETHには残った。アルトではテーマごとの差がさらに広がった。
その上から、原油100ドルと米金利上昇が市場全体を押さえています。
今週のTake-home
- BTC現物ETFは前週約+9.87億ドルから、今週約-4.63億ドルへ反転した
- ETH現物ETFには約1.97億ドルが流入し、BTCとの資金フローに差が出た
- ステーブルコイン供給はほぼ横ばいで、市場全体への新規資金流入はまだ弱い
- PPI・CPIと原油100ドルがFRBの利上げ観測を再び強めた
- 週末のサウジ東西パイプライン停止で、来週の原油リスクはさらに高まった
- 来週はCLARITY法案の手続き採決とFOMCが連続する
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